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最終更新日:2023年6月20日
この記事を監修してくださったのは…
大腸内視鏡検査のスペシャリスト!
国立がん研究センター東病院 消化管内視鏡科 医長
国立がん研究センター先端医療開発センター 内視鏡機器開発分野 分野長
池松弘朗(いけまつ ひろあき)先生
「大腸の内視鏡検査」に、皆さんはどんなイメージをお持ちですか?お尻からチューブを入れることに抵抗がある、痛そう、ちょっと恥ずかしい…。そんなイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
国立がん研究センター東病院 消化管内視鏡科医長の池松先生によると、大腸内視鏡検査でポリープの切除を受けることで、大腸がんの罹患率が大きく下がることが報告されているそうです。この記事では、大腸内視鏡検査とポリープ、大腸がんの関係について、池松先生にお話を伺いながら解説していきます。
日本において、大腸がん(大腸の悪性新生物)は、悪性新生物の中で罹患率・死亡率ともに上位であり、有効な対策を検討していく必要がある病気のひとつです。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位 |
女性 | 大腸 | 肺 | 膵臓 | 乳房 | 胃 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸10位 |
男女計 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸7位 |
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 前立腺 | 大腸 | 胃 | 肺 | 肝臓 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸5位 |
女性 | 乳房 | 大腸 | 肺 | 胃 | 子宮 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸2位、直腸7位 |
総数 | 大腸 | 肺 | 胃 | 乳房 | 前立腺 | 大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸6位 |
池松医師によると、多くの大腸がんは、「腺腫」といわれる「良性ポリープ」ががん化することが原因であることがわかっているそうです。大腸内視鏡検査の際にポリープが発見された場合、大腸がんを予防するためこの「良性ポリープ」をその場で切除しています。
つまり大腸がんは、大腸内視鏡検査を行いポリープを切除すれば、多くを予防できるがんであるといっても過言ではありません。
下の図は、大腸内視鏡検査においてポリープを切除した場合とそうでない場合の、大腸がんによる死亡者数の予測を示したものです。
青線は、大腸内視鏡検査でポリープをすべて切除した方の死亡率、赤線は、大腸内視鏡検査でポリープを1つも認めなかった方の死亡率です。横が年数で、縦が死亡率になりますが、内視鏡検査を受けポリープを切除すれば、一般の人よりは大腸がんによる死亡率が低下します。また、ポリープがない方は大腸がんでの死亡率がほぼありません。
ポリープをすべて切除すると、10年間はポリープがない方とほぼ同じ死亡率ですが、10年以降は上昇していきます。したがって、ポリープを認めた人は、その後も定期的に検査をしてポリープを切除していく必要があることがわかります。ポリープは1度切除したら2度と出来ないわけではありません。したがって、定期的に検査をして、できたポリープを切除していくことが大腸がんの予防につながります。
検査間隔については、基本すべてのポリープを切除したら3年後でよいとされていますが、大腸がんの既往やポリープの数が多い方は、1年間隔で検査が必要な場合があります。
大腸がん(大腸の悪性新生物)と内視鏡検査の関係
大腸がんは、私たちにとって非常に身近なものであること、そして定期的な内視鏡検査の受診により、罹患の可能性を大きく下げられるということがわかりました。ここで、「大腸内視鏡検査を受けるタイミング」「大腸がんにもしも罹患した場合、どのような自覚症状があるのか?」について、池松先生にお話を伺ってみました。
大腸内視鏡検査を受診するきっかけは、大きく2つ。ひとつは「大腸がん検診の便潜血検査で陽性であった場合の精密検査や人間ドックで行う場合の検診」、もうひとつは「血便や腹痛など症状を認めた場合行う診断のための検査」なのだそうです。
健康診断の結果、内視鏡検査による精密検査をすすめられた経験のある方や、排便の際に出血があり、受診すべきかどうかを迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もしも大腸がんに罹患した場合、どのような自覚症状があるのでしょうか?
池松先生によると、大腸がんの自覚症状として一般的なものは、「血便」「腹痛」「お腹の張り」等。ただし、症状が出てから発見される大腸がんの多くは進行がんであり、逆に、前がん病変のポリープや早期大腸がんは基本的に自覚症状がないそうです。大腸がんへの罹患が発覚するタイミングとしては、検診で発見される場合と、血便や腹痛の症状の精密検査で発見される場合があり、検診では、早期がんも進行がんも見つかりますが、症状出現後の検査で発見される大腸がんは進行がんで見つかる場合が多いとのこと。
大腸内視鏡検査を受診するタイミングのひとつが「血便や腹痛など症状を認めた場合行う診断のための検査」とのことですが、できれば自覚症状を覚える前の段階で、大腸内視鏡検査を受けることが重要になってくるのです。
大腸内視鏡検査を行う池松医師。大腸がんリスクを下げるには、自覚症状を覚える前の受診・ポリープ切除が重要。
大腸がんの年齢別罹患率をみてみると、男女ともに50歳頃から罹患者数が増加していくことがわかります。とくに男性は、50歳頃から罹患率がぐっと上昇し、90代まで高い数値で推移しています。
早期のポリープ切除が大腸がんの予防につながることからも、リスクの高まる50歳を過ぎたら、一度大腸内視鏡検査を受けておくと安心といえるでしょう。
大腸内視鏡検査では、ポリープの有無以外に、発見されたポリープの数や大きさ等から、大腸がんになるリスクがわかり、その後にどのような間隔で大腸内視鏡検査をしていけばよいかもわかるそうです。
また、ポリープや大腸がん以外にも、血便の原因となる憩室出血や虚血性大腸炎、下痢や血便の原因となる感染性腸炎/薬剤性腸炎/潰瘍や炎症性腸疾患等の有無がわかります。なお、疾患にもよりますが血便の出血源が同定できた場合、その場で止血することができます。
健康診断などで大腸内視鏡検査をすすめられた方や、血便など不安な症状がある方は、なるべく早めに専門の病院への受診・検査を受けることが大切です。
大腸の検査ということで、お尻から器具を挿入することや痛みへの恐怖心、検査を受けることに恥ずかしいといった感情を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここからは、実際の大腸内視鏡検査の流れや注意点についてを解説していきます。
大腸内視鏡検査を受けるためには、腸内を空っぽの状態にしなくてはなりません。そのため、事前準備として、食事制限と下剤の服用が必要になります。
食事制限は、基本的に前日から行います。消化に良い検査食が売られていますので、それを前日摂取してもよいですし、購入できない場合は、腸内に残りやすい繊維質の食事を避け、炭水化物、たんぱく質中心の消化の良い食事をとることが推奨されています。
検査前日の夜20時以降は絶食となりますが、水やお茶の飲み物は大丈夫だそうです。また、アルコールも前日は控えるようにしましょう。
国立がん研究センター東病院の場合、下剤は、前日の就寝前に一般的な下剤を内服し、当日の検査3時間前ぐらいから1時間かけ約1Lの下剤と500mLのお水を飲むそうです。また、場合によっては2Lの下剤を飲むこともあります。
お通じまでの時間は人によって異なりますが、飲み始めてから1時間後にはお通じが出始め、数回お手洗いに行くと、きれいな水のような便になり、準備完了となります。
国立がん研究センター東病院で用意している検査着。検査しやすいよう、臀部に切れ込みが入っている。
大腸の検査のため、カメラとチューブは肛門から腸内に挿入されます。ここに、恐怖心や羞恥心を抱いてしまう方は少なくないでしょう。
池松先生によると、肛門部は痛みの神経があるため、まず痛み止めのゼリーを付けて内視鏡を挿入するそうです。検査中は肛門の違和感のみは残りますが、痛みが出ないように挿入していきます。もし痛みが出た場合は、希望すれば麻酔を使用してもらえるとのことです。
はじめての事は、すべて怖さを伴います。
大腸内視鏡検査はうわさが先行し、痛い、苦しい、恥ずかしいと思われておりますが、以前と違い内視鏡も日々進化していますし、我々も痛くない方法で挿入していますので、終わってみると上部内視鏡検査より楽だったと言われる方が多くいらっしゃいます。また仮に痛みがあった場合も、痛み止めを使用すれば、ほぼ寝ている間に検査が終わります。まれに検査に伴う偶発症が起こる可能性がありますが、頻度は0.01%とかなり低いです。
怖さから検査を敬遠して、大腸がんになっては意味がありませんので、是非怖がらず検査を受けてください。
国立がん研究センター東病院の検査スペース。ここで、検査からポリープの切除まで行うことができる。
私たちにとって身近な疾患である、大腸がん。しかし、大腸内視鏡検査を受け、がんの前段階である「良性ポリープ」を切除することで、罹患リスクを大きく下げることが可能だということがわかってきました。また、血便や腹痛といった症状が出てからの検査では、すでにがんが進行しているケースも考えられます。大切なのは、自覚症状を覚える前の、早期受診。
まだ一度も大腸内視鏡検査を受けたことのない方、検査をすすめられているけれどためらっている方は、ぜひ一度、専門機関を受診してみてはいかがでしょうか。
ポリープを切除することで、大腸がんは予防ができます。また、早期大腸がんなら適切な治療をすればほぼ助かります。ただし、ポリープも早期大腸がんも症状はありません。がんが大きくなり症状が出た時には手遅れの状態で発見されます。大腸内視鏡検査を受けてもらうことは、現時点のポリープの状況、その後の検査間隔がわかり、大腸がんの予防につながります。
健康で受ける必要がないと思っていても、大腸がんは隠れています。もちろん大腸がん検診で便潜血検査を受けていただいても大丈夫ですが、陰性でもがんの方はいますし、特にポリープの多くは陰性となります。そこで、50歳以上になりましたら一度大腸内視鏡検査を受けられることを強くおすすめします。
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