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公開日:2023年8月22日
健康診断などを受けた時、「血圧が高いと指摘された」「高血圧で再検査になった」などの経験はありませんか?日常生活には支障がないからといって、そのまま放置してしまうのは実は非常に危険です。繰り返し正常値を超えてしまうようになると、重大な病気を発症するリスクが高くなります。そこで今回は、高血圧の基準やリスクをはじめ、年代別・男女ごとの平均、血圧を下げるのに効果的な生活習慣や食べ物などをご紹介します。
まず、血圧とは何を示すものなのか、自分の血圧が正常値なのか判断するための測定方法や高血圧の基準について解説します。
血圧とは、血液が流れる際に、血管の壁を押す圧力のことをいいます。この圧力の強さは、心臓の動き(ポンプ作用)にともなう血流量と、血管の弾力性によって変わります。血管の広さに対して、血流量が多くなると、血液が無理やり通ろうして圧力は強くなります。こうして血管にかかる圧力が強くなる症状を、高血圧と呼びます。
高血圧のイメージとしては、狭いパイプに多量の液体が一気に流れ込んでいるような状態です。なお血圧はどの血管にも生じますが、血圧値においては動脈に関する数値を指すのが一般的です。
ちなみに血液は心臓の収縮・拡張(ポンプ作用)によって血管に流れており、心臓が縮む時と膨らむ時では、おもに動脈にかかる血流の圧力が異なります。それは、心臓が収縮して血液を押し出そうとするほうが、圧力がかかりやすくなるためです。反対に心臓が拡張する時には、全身から血液を吸い込んでいる状態なので、動脈には圧力がかかりにくくなります。
こうした血流の仕組みから、血圧値には、2つの種類が存在しています。ひとつは、心臓がぎゅっと縮んで血液を送り出す時の「収縮期血圧(最高血圧)」。もうひとつは血液が心臓に戻ってきて膨らむ時の「拡張期血圧(最低血圧)」です。いわゆる「上の血圧」と呼ばれるのが「収縮期血圧(最高血圧)」で、「下の血圧」が「拡張期血圧(最低血圧)」です。
前述のように、血流量が増えることで、血圧は高くなります。血流量が増える原因はさまざまですが、たとえば塩分を摂りすぎた時など。塩分濃度を下げるために、血液中の水分が増えるので、血流量が増加してしまうためです。また肥満の場合も、過食にともなう過剰な塩分摂取や多量のインスリンの働きにより、血圧の上昇を引き起こします。同様に、血液量がかわらなくても、高脂血症により血管の壁に脂肪が付着して血管が細くなることで、相対的に血管にかかる圧力が増加することでも、血圧は上昇します。
高血圧になると、ほとんど自覚症状がなく、気づかないまま血管に対して常に強い圧力がかかる状態になります。そしてその血流量による圧力に耐えようとし続けるうちに、血管の内壁は厚く硬化していきます。そうなると血管の弾力性がなくなり、血液も詰まりやすくなって、さまざまな病気を引き起こす原因になります。血液がうまく流れない場合に発生しやすいのは、脳卒中・心臓病・腎臓病・大動脈瘤など。命に関わる疾病になる可能性が高くなるため、高血圧には注意が必要です。
また血圧は、40歳~75歳になる医療保険者を対象とした特定健診における、「メタボリックシンドローム判定・特定保健指導レベル(階層化)」に使われる項目でもあります。肥満による生活習慣病予防の基準になるものなので、日頃から血圧のコントロールを心がけておくことが大切です。
血圧値は、温度変化・ストレス状態・自律神経など、さまざまな要因で変動します。実際に血圧の数値は測る環境などによっても変わってくることから、血圧が正常かどうかを判断する方法は以下①~③の3つがあります。
①診察室血圧 |
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---|---|
②家庭血圧 |
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③24時間血圧 |
|
上記の3つの血圧の測定方法のうち、一般的なのは診察室血圧と家庭血圧です。いずれも1回の測定ではなく、診察室血圧なら数回(別日に実施)、家庭血圧なら5~7日の平均の測定結果をもとに高血圧の判定をします。なお前述にある収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)のうち、どちらかが正常値を超えたら高血圧と診断されます。
ちなみに、診察室血圧では高血圧の基準値(140/90mmHg以上)が出るのに対し、自宅などの診察室外で測定して、正常域の血圧値(135/85mmHg未満)の結果になるケースを、白衣高血圧といいます。
なお白衣高血圧とは反対に、診察室血圧は正常域の数値(140/90mmHg未満)になるのに対し、早朝や夜間、昼間など特定の時間、あるいは医療機関以外の特定の場所で高血圧基準値(135/85mmHg以上)になる状態を仮面高血圧と呼びます。仮面高血圧は見逃されやすいうえに、特定の条件下で血圧が上昇するという点で通常の高血圧と異なります。また、脳卒中や心筋梗塞などの発症率が高いので、危険な高血圧ともいわれています。
また血圧の正常値の範囲は、以下のとおりです。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |||
---|---|---|---|---|
最高血圧 | 最低血圧 | 最高血圧 | 最低血圧 | |
正常血圧 | ~120未満 | ~80未満 | ~115未満 | ~75未満 |
正常高値血圧 | 120~129 | ~80未満 | 115~124 | ~75未満 |
高血圧や低血圧にも複数の種類があり、それぞれで原因は異なります。なお高血圧になっても自覚症状はほとんどありません。しかし、血圧が高い状態が続くと心臓や血管に負担がかかり、心疾患や脳血管疾患などの重篤な症状に発展する可能性も考えられます。
また低血圧の場合も、基本的には一過性であるものの、めまい・倦怠感・ふらつき・立ちくらみなどの体調不良を引き起こすことがあります。ここからは、高血圧・低血圧についてさらに詳しくみていきましょう。
高血圧症とは、安静時でも慢性的に血圧の数値が正常値を超えている状態が続いていることをいいます。高血圧症は動脈硬化が進んでしまう状態で、狭心症・心筋梗塞などの心疾患や、脳出血・脳梗塞といった脳血管疾患をはじめ、致命的なリスクが非常に高いものです。
また高血圧症は数値によって、次のように分類されています。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |||
---|---|---|---|---|
収縮期血圧 (最高血圧) |
拡張期血圧 (最低血圧) |
収縮期血圧 (最高血圧) |
拡張期血圧 (最低血圧) |
|
高値血圧 | 130~139 | 80~89 | 125~134 | 75~84 |
Ⅰ度高血圧 | 140~159 | 90~99 | 135~144 | 85~89 |
Ⅱ度高血圧 | 160~179 | 100~109 | 145~159 | 90~99 |
Ⅲ度高血圧 | 180~以上 | 110~以上 | 160~以上 | 100~以上 |
(孤立性) 収縮期高血圧 |
140~以上 | ~90未満 | 135~以上 | ~85未満 |
上記の血圧の重症度が上がるごとに、疾病のリスクも変わってくるため、管理の仕方や治療の方法は異なります。たとえばI度高血圧で若年層の場合、とくに疾患がなければ生活習慣の見直しから治療を始めますが、III度高血圧に該当する場合にはすぐにでも薬物療法を始める必要があります。
また高血圧症には、「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の2つ種類があり、それぞれで次のような違いがあります。
・本態性高血圧
おもに遺伝的体質や生活習慣から高血圧になるタイプで、基本的に明確な原因は特定できないとされています。肥満・飲酒・塩分の過剰摂取・自立神経の不調など、さまざまな要因が重なって高血圧を引き起こすのが本態性高血圧です。日本人の約90%は、本態性高血圧症といわれています。
・二次性高血圧
血圧が高い原因となっている疾患が明らかで、その疾患によって血圧が上昇している状態のことをいいます。具体的には慢性腎盂腎炎・多発性嚢胞腎などの腎疾患や、慢性甲状腺炎といった内分泌疾患をはじめ、これらの病気が原因で高血圧を起こすのが二次性高血圧です。腎動脈狭窄といった腎血管性高血圧などは、場合によっては外科手術で治療できる可能性もあります。
なお高血圧症と診断された際には、原因となる疾病の有無・臓器への影響・合併症などの確認のために、以下のような検査が実施される場合があります。
出典:厚生労働省「臨床調査個人票 086.肺動脈性肺高血圧症」をもとに当社作成
また高血圧症が進行すると、前述にもあるように、次のような循環器関連の病気を引き起こす危険があります。では高血圧が原因となる、代表的な症例をご紹介します。
・脳卒中
脳卒中とは、脳の血管に関わる病気全般のことをいいます。脳の血管が詰まったり血流が悪くなったりすることで、脳の細胞に血液が十分にいきわたらなくなる脳梗塞の他、脳の血管が破裂する脳出血やくも膜下出血などが該当します。高血圧症による動脈硬化から動脈瘤が発生し、動脈瘤が破裂することでくも膜下出血を起こします。
・心臓病
心臓病は、心臓の構造や機能の異常により生じる病気の総称です。心臓は、全身へ血液を送るときに高血圧によって、過度の負担がかかるようになります。そして、心臓に酸素や栄養を届けている血管が詰まったり狭くなったりすることで血のめぐりが悪くなり、心筋梗塞や狭心症を引き起こします。これらの影響で心臓の動きが悪くなったところに、感染症による心臓への負担が大きくなることで心不全を誘発します。
・腎臓病
腎臓病は腎臓のはたらきが低下する病気です。腎臓には、血液の老廃物をろ過して体外に尿として排出する機能があり、体内の水分量を適切にして血圧を調整する役割があります。高血圧によって腎臓の血管に負担がかかると、血圧のコントロールがうまくできなくなります。また、腎血管に動脈硬化が起こることが腎臓の血流を悪くし、腎機能を悪くします。こうしたことで、腎不全(慢性腎臓病)などを引き起こす場合があります。
低血圧とは、血流量による圧力が低く、全身に血液が巡りにくい状態を指します。低血圧の特徴として、やせ型・顔が青白い・疲れやすい・神経質などで、遺伝的な体質が多いとされています。冬には冷え性になりやすく、朝がなかなか起きられないといった、日常的な不調を感じやすいのも低血圧の症状です。
低血圧の場合、高血圧のような基準はとくに設けられていませんが、WHOが示す低血圧の目安としては、100/60mmHg未満。血圧が低くてもとくに症状がない場合は、治療をしなくても良いというのが一般的な考えのようです。しかし、数値が正常の範囲以下になると、次のような症状が出るケースもあります。
・本態性低血圧症(体質性、一次性)
特別な原因はなく慢性的に低血圧になっており、めまい・立ちくらみ・朝起き不良・疲労感・肩こり・頭痛・動悸などの症状が出やすい状態です。遺伝や体質が要因の場合が多く、よほど症状が強くない限りは、基本的には問題ないとされています。また低血圧の約9割は、本態性低血圧症といわれています。
・起立性低血圧
寝ている時と立ち上がった時で血圧が変動するもので、とくに体を起こしたり立ち上がったりした際に、急激に低血圧になる症状です。めまいや立ちくらみ、ひどい時には吐き気をともなうことも。成長期にもよく見られる低血圧で、場合によっては薬物療法をおこなうケースがあります。
・食後低血圧
食事のあとに、急激な倦怠感・胃もたれ・眠気などの症状が起こり、食後だけ血圧が急低下する低血圧です。自律神経機能が低下しやすい 高齢者によく見られます。
低血圧では、日常生活に支障をきたすほどの症状がない限り、基本的には治療はしません。しかし、体のだるさを感じやすいなどの不調になりやすい点には注意が必要です。タンパク質・ミネラル・ビタミンなどを豊富に含む栄養バランスのよい食事や、筋肉量を増やす適度な運動など、おもに生活習慣の見直しが改善策となります。
一般的に血圧値は、性別や年齢による体質の変化などにともなって変動します。では各世代や性別における血圧の平均値や、血圧値の推移の仕方などを詳しく解説します。
年齢が上がるごとに、血管の壁の厚みが増して弾力性がなくなる動脈硬化が進むので、高齢者のほうが血圧の平均値は高まる傾向にあります。また抗動脈硬化作用のある女性ホルモン(エストロゲン)の影響から、男性のほうが血管は硬くなりやすく、女性に比べて血圧の平均値は高めになりやすいのが特徴です。
また厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査報告」による性別・年代別の血圧値の平均値は、下記の表になります。20代・30代・40代・50代・60代・70代以上のそれぞれの年代での数値を参考にしてみてください。
20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代以上 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最高 | 最低 | 最高 | 最低 | 最高 | 最低 | 最高 | 最低 | 最高 | 最低 | 最高 | 最低 | |
男性 | 115.9 | 68.1 | 117.2 | 73.8 | 125.4 | 80.6 | 129.7 | 81.0 | 134.1 | 78.3 | 133.9 | 74.5 |
女性 | 105.7 | 63.8 | 108.0 | 66.4 | 113.7 | 70.9 | 121.8 | 74.5 | 130.6 | 76.7 | 133.1 | 73.9 |
20代 | ||
---|---|---|
最高 | 最低 | |
男性 | 115.9 | 68.1 |
女性 | 105.7 | 63.8 |
30代 | ||
---|---|---|
最高 | 最低 | |
男性 | 117.2 | 73.8 |
女性 | 108.0 | 66.4 |
40代 | ||
---|---|---|
最高 | 最低 | |
男性 | 125.4 | 80.6 |
女性 | 113.7 | 70.9 |
50代 | ||
---|---|---|
最高 | 最低 | |
男性 | 129.7 | 81.0 |
女性 | 121.8 | 74.5 |
60代 | ||
---|---|---|
最高 | 最低 | |
男性 | 134.1 | 78.3 |
女性 | 130.6 | 76.7 |
70代以上 | ||
---|---|---|
最高 | 最低 | |
男性 | 133.9 | 74.5 |
女性 | 133.1 | 73.9 |
高血圧は身体的な遺伝に加えて、住環境をともにすることから親子などの同じ家族間で似たような生活習慣を受け継いでいく可能性が高く、約60%は家族性が要因とされています。
単純な遺伝子の他に、家族で同じように塩分過多や肥満になりやすい食生活などをしていることで、高血圧の原因になっている場合があります。とくに高血圧が続いている家系では、家族全員で普段の生活習慣を見直しながら、日常的に予防していくことも大切です。
若いうちから生活習慣に気をつけて、高血圧を予防するためにも、15歳以上から年1回は定期的に血圧を確認することをおすすめします。家庭用の血圧計があれば、病院でなくても自宅で簡単にチェックできて便利でしょう。
血圧を測って高かったとしても、血圧を下げるためにはどうしたいいのか、わからない方もいるのではないでしょうか。そこでこちらの項目では、生活習慣の見直しや血圧を下げるために必要な食べ物やなど、日々の生活のなかで取り組むことができることをご紹介します。
高血圧は食事や運動などの生活習慣を改めることで改善できるといわれています。具体的に血圧を下げるための生活習慣改善のポイントを見ていきましょう。
・食事
とくに高血圧の原因になりやすいのは、塩分の摂り過ぎです。高血圧の場合には、1日の食塩摂取量は6グラム未満が目標とされており、目安は小さじ1杯。なかでも、加工食品・しょう油や味噌などの調味料・漬物には塩分が含まれやすいので注意しましょう。また野菜やフルーツに含まれるカリウムは、体内の塩分の排出を促す作用があり、なるべく意識的に食事に取り入れるようにしましょう。
・体重や体型(肥満)
肥満も高血圧の原因のひとつとして考えられており、とくに体重が増加してきている場合には、食事制限をして減量することも効果的です。
なお肥満かどうかの基準になるのは体格指数(BMI)で、体重(キログラム)÷身長(メートル)÷身長(メートル)で算出できます。体格指数の標準値は18.5~25となるため、25を超える場合には要注意です。とはいえ体格指数は、あくまで身長と体重の数値上の目安で、例えば筋肉質によって体重が重くなっている場合でも25を超えるケースがあります。
肥満とは脂肪が増えすぎた状態を指すため、実際には単純な体格指数だけでは肥満なのか判断できません。健康に影響する肥満の基準としては、脂肪が溜まる部位も関係しています。お腹周りに内蔵脂肪が溜まるメタボリックシンドローム(腹囲:男性85cm以上・女性90cm以上)だと、高血圧に影響する可能性が高いとされており、減量の必要があります。
ちなみに肥満体型から1kg減らすと血圧は約2mmHg低下するといわれており、減量は高血圧対策として確かな効果が見込めます。減量のために運動すると、血流がよくなり、血圧が下がりやすくなるので、継続的に体を動かすことも重要。なかでもウォーキング・ジョギング・水泳といった有酸素運動は、実際の高血圧の運動療法にも推奨されています。ただし急激な運動は、脳や心臓に一気に負担をかけてしまうケースもあるので、無理のない範囲でおこなうようにしましょう。
・飲酒や喫煙
多量のアルコール摂取やたばこも、高血圧を引き起こしやすいものと考えられています。とくにたばこには、動脈硬化を促す血管に有害な成分が含まれており、高血圧と診断された時には禁煙は必須です。飲酒や喫煙が習慣化している場合には、血圧に大きく影響している可能性が高いので見直しましょう。
・ストレス
心理的・身体的なストレスがかかると、脈拍などをコントロールする自律神経のうち、臓器の動きを増幅させる交感神経が活発になり、血圧が上昇します。ストレスは高血圧の原因のひとつとされ、できるだけ緩和できる生活環境に整えることも重要です。たとえば温度変化や不規則な生活リズムなども、高血圧につながる可能性があります。おもなストレスの対処法としては、「休養」「適度な運動」「入浴」などが効果的なので、ぜひ試してみてください。ストレスが原因で血圧を上昇させないためにも、日々の生活習慣の改善を意識するようにしましょう。
高血圧の対策で大きなポイントとなるのは、やはり前述でも紹介した減塩と、血圧を安定させる栄養素の摂取をしっかりと実践することです。
そこで血圧を下げるのに有効な食事方法として、最近ではDASH食が注目されています。DASH食とは、「Dietary Approaches to Stop Hypertension」に由来し、直訳して「高血圧(Hypertension)防止に近づける食事療法」という意味になります。もともとはアメリカの研究機関で開発された高血圧の食事療法です。DASH食では、血圧低下に効果のある栄養素といわれる、カリウム・カルシウム・マグネシウム・食物繊維を中心に摂取します。それぞれの栄養素には、以下の機能があります。
カリウム | 塩分の体外排出を促進 |
---|---|
カルシウム | 心臓や血管の収縮を抑えて血圧上昇を防止 |
マグネシウム | カルシウムの機能をコントロールし、高血圧を抑制 |
食物繊維 | 動脈硬化に影響する糖質・脂質・コレステロールの体外排出を促進 |
具体的には、次のような食べ物や飲み物を意識的に取り入れつつ、健康的な食生活に整えていきましょう。
・野菜
一例ではありますが、次のような野菜類は、血圧を下げるのに必要なカリウム・カルシウム・食物繊維をよく含んでいます。さらにこうした野菜類は、生のサラダや素材の味を活かしたスープなどに調理すると、より塩分を抑えた食事にできます。
・フルーツ
フルーツは、血圧を下げるのに効果的なカリウム・カルシウム・マグネシウム・食物繊維が豊富に含まれています。ただしフルーツの場合、摂取しすぎると糖分過多になってしまうことがあるので、適度な量に心がけましょう。
・豆類、種実類(ナッツ)
豆類や種実類(ナッツ)には、血圧を下げるカリウム・カルシウム・マグネシウム・食物繊維が豊富に含まれる他、とくに大豆だとたんぱく質も摂取しやすいのが特徴です。ただし加工製品の場合は塩分が含まれているものが多いので、味のついていない商品を選ぶようにしましょう。
・乳製品
ここまでにも出てきているように、カルシウムは血圧を下げるのに効果的で、やはり牛乳は欠かせない飲み物です。とくに牛乳なら、低脂肪乳にすると脂質を抑えられます。ヨーグルトは、プレーンタイプのものがおすすめ。フレーバータイプだと、塩分や糖分を多く摂り過ぎてしまう可能性が高いので注意しましょう。
・調味料
味付けに関して、食塩類から次のようなものに代替すると、塩分制限につながります。
上記のような食塩以外の調味料を活用することで、風味を活かした高血圧対策の減塩食を楽しむことができます。たとえば酢・ケチャップ・マヨネーズ・ドレッシングなどの低ナトリウム調味料を使うことで、塩分制限をしながらも味のバリエーションを広げることが可能。
また出汁や薬味なら、素材の旨味を引き立てるだけでなく、コクや香りをアップさせてくれます。胡椒や唐辛子といった香辛料であればスパイスの刺激感を味わいつつ、塩分摂取を抑えて血圧の低下につなげることができます。
高血圧は、知らず知らずのうちに健康を害する危険な病気です。そして、高血圧の治療の基本は、食事や運動など生活習慣の改善です。血圧を下げる薬を使っても、重要なのは日頃の健康維持であり、継続して食事や運動などに気を遣うことが大切です。血圧が気になる方は、ぜひ本記事を参考に、毎日の生活を見直してみてください。
内科認定医・がん治療認定医
国立大学医学部医学科卒業後、公立病院にて初期研修の2年を終了後、3年目からはがん治療を専門としながら幅広く内科疾患の診療に従事しています。また、同時に子育てにも奮闘中。治療が必要となる前の生活習慣の改善、また病気についての正しい知識が大事であることを実感し、病気についての執筆活動にもあたっています。
(掲載開始日:2023年8月22日)
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