2019年10月1日から、消費税の税率が10%に引き上げられます。これにともない、所得が一定の水準より低い年金受給者に向けて、「年金生活者支援給付金」が支給されるようになります。
年金生活者支援給付金の支給対象になるのは、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受給している方です。それぞれ支給要件や給付額が異なるため、年金を受給している方やそのご家族の方は、年金生活者支援給付金の支給対象になるのかを確認しておきましょう。
年金生活者支援給付金とは
年金生活者給付金には、老齢(補足的老齢)生活者支援給付金、障害年金生活者支援給付金、遺族年金生活者支援給付金の3つの種類があります。
上記の給付金の支給は2019年10月1日の消費税引き上げと同時にスタートし、初回は10月分と11月分の給付金として、2019年12月の年金支給日に支払われます。2回目以降の給付は、年金支給日(偶数月の中旬)に2ヵ月分まとめて支給されます。
ただし、支給要件を満たしている場合でも日本国内に住所がない人、年金が全額支給停止になっている人、または刑事施設等に拘禁されているときは給付金の対象外になるので注意しましょう。
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金とは、現在老齢基礎年金を受け取っていて、かつ所得が少ない人に支給される給付金です。自分や家族が該当者かどうか確認してみましょう。
老齢基礎年金を受給している方は、老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の支給対象になるかもしれません。
・老齢年金生活者支援給付金の支給要件
老齢年金生活者支援給付金の支給要件を見ていきましょう。
- 1.65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
- 2.前年の公的年金等の収入とその他の所得(給与所得や利子所得)の合計額が、老齢基礎年金満額相当の約78万円以下であること
(毎年度、老齢基礎年金の額を勘定して改定される。2019年度は779,300円) - 3.同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
65歳以上で老齢基礎年金を受給している人は、まず前年度の所得の合計を算出してみましょう。この合計には、給与所得や利子所得など、公的年金以外の所得も含まれます。
・老齢年金生活者支援給付金の給付額はいくら?
老齢年金生活者支援給付金の給付額は、年金保険料を納付した期間(保険料納付済期間)と年金保険料を納めることが免除されていた期間(保険料免除期間)によって変わります。
老齢基礎年金を満額(約78万円)受給している人の場合、老齢年金生活者支援給付金の給付額は年額6万円(月額5,000円)となり、年金に給付金を上乗せした合計額は約84万円となります。
老齢年金生活者支援給付金は、保険料納付済期間と保険料免除期間をもとに、以下の計算式で算出されます。
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の給付額の計算式
- 保険料納付済期間に基づく給付額の5,000円は、毎年物価に応じて見直されるため、年度によって変動します
- 保険料免除期間に基づく給付額は、保険料全額免除、4分の3免除、および半額免除の場合は約10,800円、保険料4分の1免除の場合は約5,400円で計算します
給付額の計算式で注意したいのが、保険料納付済期間に基づく給付額における5,000円と、保険料免除期間に基づく給付額の約10,800円です。
ただし、保険料納付済期間に基づく給付額における5,000円は、毎年物価に応じて見直されるため、年度によって変動します。また、保険料免除期間に基づく給付額における約10,800円は保険料全額免除、4分の3免除、半額免除の期間が対象で、保険料4分の1免除期間の場合には、約5,400円になります。
老齢基礎年金の満額相当の金額も毎年改定され、給付額が変動する点に注意しましょう。
この式をもとに、いくつかのケースで毎月の老齢年金生活者支援給付金と老齢基礎年金の合計額を計算すると、以下の表のようになります。
保険料納付済期間 | 保険料全額 免除期間 |
老齢年金生活者支援給付金 (月額) |
老齢基礎年金 (月額) |
老齢基礎年金(月額)+ 老齢年金生活者支援給付金(月額) |
---|---|---|---|---|
480月 | 0月 | 約5,000円 | 約65,000円 | 約70,000円 |
240月 | 0月 | 約2,500円 | 約32,500円 | 約35,000円 |
360月 | 120月 | 約6,450円 | 約56,875円 | 約63,325円 |
240月 | 240月 | 約7,900円 | 約48,750円 | 約56,650円 |
・老齢年金生活者支援給付金の金額はいつわかるの?
2019年4月1日時点で老齢基礎年金を受給している方であれば、同年9月に日本年金機構から老齢年金生活者支援給付金の案内が送られてきます。案内の中には請求手続きに必要な書類が入っており、その中に老齢年金生活者支援給付金の見込み額(月額)が記載されています。2019年4月2日以降に老齢基礎年金の受給を開始する人は、給付金の請求手続き後に日本年金機構から送られてくる審査結果の通知書に支給金額が記載されます。 案内が送られてきたら、給付の見込額を確認してみましょう。
・補足的老齢年金生活者支援給付金について
老齢年金生活者支援給付金の所得要件を満たしていない人でも、年金収入と所得の合計額が約88万円(2019年度は87万9,300円)以内であれば、補足的に給付金を受け取ることができます。
たとえば、老齢基礎年金を年78万円(年)、老齢年金生活者支援給付金を年6万円(年)受け取っている人の収入は、年額84万円になります。これは、老齢年金生活者支援給付金の対象にならない年収80万円の人よりも多い額です。この所得の逆転をなくすため、補足的老齢年金生活者支援給付金があり、前年の年金やその他の所得を合計した金額によって給付額が逓減します。
補足的老齢年金生活者支援給付金の対象者数は、全国に約160万人(*)います。年間の収入が約88万円以内の人は、この給付金の対象になっていないか確認してみましょう。
- 2019年度の場合
<ミニコラム>子どもの扶養に入っていても、年金生活者支援給付金は受け取れる?
子どもの扶養に入っている高齢者でも、支給要件を満たしていれば、老齢年金生活者支援給付金を受け取ることができます。ただし、支給要件にある通り、「同一世帯の全員が市町村民税非課税」でなければなりません。
同一世帯とは、同じ家で暮らし、生計を共にしている世帯を指します(*)。子どもの扶養に親が入る場合、同一世帯のケースもあれば、別世帯のケースもあります。別世帯であれば、年金を受給している親は年金生活者支援給付金を受け取ることができますが、同一世帯であれば、「同一世帯の全員が市町村民税非課税」という要件を満たさないと年金生活者支援給付金を受給することはできません。
- 同居していても、生計を別にしている場合は別世帯(同住所世帯)になります。
障害年金生活者支援給付金について
現在障害基礎年金を受給しており、支給要件を満たしている人は、障害年金生活者支援給付金の支給対象となります。支給要件と支給額について詳しく見ていきましょう。
障害基礎年金を受給している方は、障害年金生活者支援給付金の支給対象になるかもしれません。
・障害年金生活者支援給付金の支給要件
障害年金生活者支援給付金の支給要件を見ていきましょう。
- 1.障害基礎年金を受給していること
- 2.前年の所得額が「462万1,000円+扶養親族の数×38万円以下」であること
2つめに記載されている「38万円」の部分は、同一生計の配偶者が70歳以上、または老人扶養親族(控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の扶養親族)の場合には48万円で計算されます。特定扶養親族(その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の扶養親族)、または16歳以上19歳未満の扶養親族がいる場合には63万円となります。
障害年金生活者支援給付金の所得要件
・障害年金生活者支援給付金の給付額はいくら?
障害年金生活者支援給付金の給付額は、
- 障害等級が2級の方…月額5,000円
- 障害等級が1級の方…月額6,250円
となります。ただし、この給付額は物価によって変動するため、毎年度の見直しにより変わることがあります。
遺族年金生活者支援給付金
遺族基礎年金を受け取っており、支給要件を満たしている人は、遺族年金生活者支援給付金の支給対象となります。
遺族基礎年金を受給している方は、遺族年金生活者支援給付金の支給対象になるかもしれません。
・遺族年金生活者支援給付金の支給要件
遺族年金生活者支援給付金の支給要件を見ていきましょう。
- 1.遺族基礎年金を受給していること
- 2.前年度の所得額が「462万1,000円+扶養親族の数×38万円」以下
2つめの要件は、障害年金生活者支援給付金と同じく、計算式にある「38万円」の部分が家族構成によってかわります。同一生計の配偶者が70歳以上、または老人扶養親族の場合には48万円になります。特定扶養親族、または16歳以上19歳未満の扶養親族がいる場合には63万円です。
・遺族年金生活者支援給付金の給付額はいくら?
遺族年金生活者支援給付金の給付額は、月額5,000円です。こちらも障害年金生活者支援給付金と同様に、物価変動によって毎年の支給額が見直され、支給額が変わることがあります。また、2人以上の子どもが遺族基礎年金を受給している場合には、5,000円を子どもの人数で割った額がそれぞれの子どもに支払われます。
年金生活者支援給付金を受け取る方法は?
これら3種の年金生活者支援給付金を受け取るためには、認定請求手続きを行う必要があります。
年金生活者支援給付金の対象者には、2019年8~9月ごろに日本年金機構から手続きに関する案内が発送される予定です。2019年の4月1日時点で老齢基礎年金を受け取っている方には、前述の老齢年金生活者支援給付金の見込額(月額)がこちらの案内に記載されています。日本年金機構から封書が届いたら、必ず中身を確認しましょう。
・年金受給のタイミングで異なる手続きの流れ
「2019年4月1日の時点ですでに年金を受け取っている人」と、「2019年4月2日以降に年金の受給を始める人」で手続きの流れが異なります。受け取った案内に沿って、手続きを済ませましょう。
2019年4月1日時点で老齢・障害・遺族基礎年金を受給している方
2019年4月1日時点ですでに年金を受給しており、年金生活者支援給付金の給付対象となる人は、日本年金機構から手続きの案内の封書が届いたら、同封されている請求書に氏名などの必要情報を記入・捺印し、返送して手続きは終了です。
日本年金機構は、市町村から所得情報を取得して、支給要件を満たしているかを判断したうえで案内の封書を送付しますが、所得情報を確認できないなど、日本年金機構が支給要件を満たしているか確認できない人もいます。この場合にも、年金生活者支援給付金の案内と請求書が送られてきますので、必要事項を記入・捺印の上、請求書を返送し、支給要件に該当するかの判定を待ちましょう。
2019年4月2日以降に老齢・障害・遺族基礎年金の受給を始める人
2019年4月2日以降に各年金の受給を開始する人は、年金の裁定請求手続きのタイミングで、給付金の認定請求手続きも行います。裁定請求手続きとは、年金の受給権を持つ人が年金の支払いを請求する手続きのことです。
老齢基礎年金の場合は、支給開始年齢が近づくと、裁定手続きの案内と給付金の請求書が送られてきますので、受け取ったら手続きを済ませましょう。障害基礎年金や遺族基礎年金を新規で受け取るために手続きをする場合は、年金の裁定手続きを行う際に、年金生活者支援給付金の請求書を提出する必要があります。
・年金生活者支援給付金の受け取り方
年金生活者支援給付金は、年金支給日に、年金を受け取っている預金口座に振り込まれます。年金とは別の名目で振り込まれるため、通帳には年金と給付金の2つの振り込みが記載されます。
給付月は年金と同様で偶数月に、2ヵ月分を一度で受け取ります。制度が始まって最初の支給は、2019年12月の予定です。10月までに手続きができなかった場合でも、2019年12月までに請求を行えば、2019年10月分からの金額が支給されます。ただし、請求手続きが2020年1月以降になると、請求月の翌月分からの支給になりますので、手続きはなるべく早く行いましょう。
年金生活者支援給付金の疑問
・年金生活者支援給付金の支給はいつまで?
年金生活者支援給付金制度は恒久的な制度ですので、支給要件を満たしていれば、制度がある間は給付金を受け取り続けることができます。支給要件から外れた場合には給付金は受け取れなくなります。
・年金生活者支援給付金は毎年認定請求が必要なの?
給付手続きは、一度行えば翌年以降手続きを行う必要はありません。ただし、支給要件から外れて年金生活者支援給付金の支給対象外となった人が、その後再び支給要件を満たした場合には、再度認定請求の手続きが必要です。
・夫婦の場合、年金生活者支援給付金は二人とも受け取れる?
年金生活者支援給付金は世帯単位で給付されるものではありません。年金受給者一人ひとりが受け取れることのできる給付金ですので、夫と妻がそれぞれ支給要件を満たしている場合には、それぞれが給付金を受け取ることができます。
まとめ
年金生活者支援給付金は、2019年10月からの支給です。老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の支給を現在受けている方、あるいは2019年10月以降に各年金の支給対象となる方は、年金生活者支援給付金の給付対象である可能性があります。日本年金機構から案内が届いた場合には内容を確認し、認定請求手続きを行いましょう。
年金生活者支援給付金は物価の変動を受けて給付額が変わります。さらに、所得が増えたり、世帯の構成に変化があったりすると給付の対象外となることもあるので、支給要件や給付額を確認して、自分や家族がどれくらい年金生活者支援給付金をもらえるのか確認しましょう。
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- 税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度に基づくもので、すべての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2019年9月3日)