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最終更新日:2023年3月3日
実際に自転車事故を起こしたとき。気が動転してしまい、冷静に対処することができなくなってしまう可能性も考えられます。落ち着いて対処するためには、日ごろから自転車事故のときにどのように対応したらよいのか、を知っておくことが大切です。自転車で事故を起こしてしまったときに、必要な行動とは? All about自動車保険ガイドの西村有樹さんに話しを伺いました。
実際に自転車で事故を起こしてしまったら、まず何をすればよいのでしょうか?
「自転車事故に限らず、事故全般にいえることですが、ケガ人がいるときにはケガ人の安全の確保が最優先となります。次いで、自分自身の安全を確保しましょう。事故現場が交通量の多い所などの場合には二次災害の危険もあるため、まずはケガ人と自分の身の安全を確保することが大切です。
次に、ケガ人が自力で病院へ行けるかどうかを確認し、それが難しいようなら、救急車を手配するなどの対応が必要になります」
関係者の安全の確保、必要に応じた救急車の手配を終えたら、次にすべきことは、なんでしょうか?
「警察への連絡、届け出をしなければなりません。事故の相手から『示談にしましょう』とか、『自分が100%悪いと念書を書け』などといわれるケースもあると聞きますが、そうした要求には応じないでください。
警察へ届け出ず示談にしてしまうと、保険が使えなかったり、後で多額のお金を支払わなければならなくなったりする可能性もあります。道路交通法の報告義務違反にあたり、後々のトラブルにもつながりやすいので、自転車での事故でも事故を起こした場合には、必ず警察へ届け出るようにしましょう」
「関係者の安全の確保、必要に応じた救急車の手配、警察への届け出を終えて、余裕があればその場で加入している損害保険会社へ連絡してもよいですが、実は特に慌てる必要はありません。
警察に事故を届け出ると、警察官が双方の運転免許証や車検証を確認しながら実況見分し、現場確認が行われます。その結果が各都道府県にある自動車安全運転センターに提供され、『交通事故証明書』(※1)の発行が可能となるのです。
『交通事故証明書』があれば各種損害保険の保険金を請求できますから、事故後の状況が落ち着いて、あまり遅くなりすぎないうちに、損害保険会社へ連絡するのがよいでしょう。念のため、お伝えしておくと、『交通事故証明書』の発行には、人身事故では事故発生から5年、 物件事故では事故発生から3年という申請期限があります」
警視庁発表の「自転車事故の推移(2021年中)」(※2)によれば、2016年から2021年まで、東京都内の交通事故における自転車関与率は上昇傾向にあり、2021年は約44%となっています。
警察庁発表の「令和3年中の交通事故の発生状況」(※3)によれば、令和3年中の全国の自転車事故(第1・第2当事者)69,694件のうち、約65%にあたる46,082件で自転車を利用する側が交通違反を犯しています。なかでも最も多いのは「安全運転義務違反」の28,035件となっています。以降、「交差点安全進行義務違反」8,755件、「一時不停止」3,726件、「信号無視」1,221件、「通行区分違反」1,080件、「徐行場所」958件、「優先通行妨害」526件と続いています。
全体の違反の半数以上を占める「安全運転義務違反」は、「安全操作義務」や「安全確認義務」を怠るもので、ハンドル・ブレーキなどを確実に操作しなかったり、他人に危害を及ぼすような速度・方法で運転したりする行為がこれにあたります。片手運転やスピードの出しすぎそのものが違反にあたるわけではありませんが、それによって歩行者の生命・身体に危険を及ぼせば、「安全運転義務違反」に問われる可能性があるでしょう。
また、条例によって、傘をさしながらの運転など、いわゆる「ながら運転」が禁止されている場合もあります。例えば、東京都では、傘をさしながらの運転、スマートフォン、携帯電話を操作しながらの運転、大音量で音楽などを聞きながらの運転が禁止されています。
「道路交通法」や条例の大きな目的のひとつは安全を図ることなので、法令等を順守するとともに、自転車が「軽車両」という「車の一種」であることを忘れずに運転することが、事故を防ぐ上ではやはり大切だといえそうです。
他の交通事故のケースと同様に、自転車事故の加害者となった場合も、刑事、民事、行政上の3つの責任を負わなければなりません。
1つ目は、刑事責任です。自転車事故を起こして、その当事者となり、相手を負傷あるいは死亡させると、過失がゼロでない限り、過失運転致死傷罪が成立し、刑事責任を負う可能性があります。さらに交通違反で事故が発生したと認められれば、道路交通法違反、また自動車運転死傷行為処罰法による危険運転致死傷罪に問われる可能性もあります。
2つ目は、民事責任です。事故の当事者となり、相手に損害を与えると、過失割合に応じて損害を賠償する義務が生じます。もし任意保険に加入していれば、保険による補償がありますが、損害額が保険の補償金額の限度額を超えた場合には、その差額を加害者本人が相手に支払わなければなりません。
3つ目は、行政上の責任です。事故の原因が交通違反にあるとみなされた場合、運転免許の必要のない自転車に乗っていて起こした事故であっても、悪質な違反の場合には、運転免許の違反点数が加算されたり、反則金を徴収されたり、免許停止処分などの重い処分に至ることがまれにあります。
自転車事故を起こして、事故の当事者となり、相手に損害を与えたときに賠償金を補償してくれるのが、「個人賠償責任保険」です。個人賠償責任保険とは、他の人にケガをさせてしまったり、物を壊してしまったりして賠償責任が生じたときに、保険金を受け取ることのできる保険です。それ以外に、自転車事故に備えて加入しておいた方がよい保険はあるのでしょうか?
「『個人賠償責任保険』は事故の相手の損害を補償するものですから、自分あるいは子どもを含む自分の家族のケガなどを補償する『傷害保険』もあわせて加入しておくことをおすすめします。
いわゆる『自転車保険』は、『個人賠償責任保険』と『傷害保険』の補償内容をあわせ、自転車向けに特化させた保険商品です。ただし『個人賠償責任保険』は自転車に乗っているときだけではなく、日常のトラブルや事故で発生した賠償責任も補償されるのが一般的です。注意しておきたいのは、『個人賠償責任保険』は自動車保険や火災保険の特約や、クレジットカードに付帯する保険としてすでに加入している場合もある点です。補償の重複には気をつけましょう」
自転車事故を起こしたとき、過失割合は損害賠償金や保険金にどのような影響を与えるのでしょうか?
「自転車事故に限らず、交通事故での過失割合は損害賠償金の金額の決定に影響を与えます。加入している個人賠償責任保険や自転車保険の保険金額の限度額内であれば、通常は過失割合を相殺し、保険金が支払われます。しかし明らかに故意の場合や、飲酒や携帯電話使用による過失は基本的に補償対象外となりますので注意してください。2013年神戸地方裁判所にて、小学生(11歳)が加害者となってしまった自転車事故の損害賠償額を約9,500万円とする判決がありました。もし自転車事故を起こしてしまえば、それだけの責任を負う可能性もある、ということを考えて行動することが重要といえるでしょう」
※1 自動車安全運転センターホームページ
https://www.jsdc.or.jp/
※2 警視庁ホームページ「都内自転車の交通事故発生状況」
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/jokyo_tokei/tokei_jokyo/bicycle.html
※3 警察庁ホームページ「統計表」
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/toukeihyo.html
フリーランスの立場から公正な情報を発信。大手損保、外資系や通販系保険会社とのネットワークを強みに「理解しやすい保険の記事」をモットーとしている。自動車保険、損保、証券などマネー分野での執筆、インタビュー多数。
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(掲載開始日:2019年6月3日)