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エコノミークラス症候群の予防法とは?原因・症状・対策などを解説

エコノミークラス症候群の予防法とは?原因・症状・対策などを解説

公開日:2025年10月16日

エコノミークラス症候群とは、狭い座席に長時間同じ姿勢でいることなどがきっかけで発症する疾患です。重症例では呼吸困難や窒息状態を引き起こし、突然死に至ることも。飛行機のエコノミークラスに長時間座ったあと、急に立ち上がったときなどに発症することが多いことから、この名前が付けられました。しかし、実際には車や自宅などの飛行機以外でも発症するリスクがあるので注意が必要です。

この記事では、エコノミークラス症候群の原因から具体的な症状、予防法、検査方法まで、わかりやすく解説します。

エコノミークラス症候群とは?

ふくらはぎが痛くてさする女性

ふくらはぎに違和感を感じる原因は、エコノミークラス症候群かも?

エコノミークラス症候群は、「エコノミー」という名前から「飛行機の中で起こるもの」と思っている方もいるのではないでしょうか?しかし、実際には長時間の車移動やデスクワークが原因で発症するケースも。また、災害時における避難所での生活や車中泊が原因で発症することもあります。

まずはエコノミークラス症候群とはどんな病気か、その定義から解説します。

・エコノミークラス症候群は飛行機だけではない?

エコノミークラス症候群の正式名称は「肺血栓塞栓症」です。

食事や水分を十分にとらないまま長時間同じ姿勢を続けていると、足の血流が悪くなり静脈内に血栓という血の塊ができやすくなって、血管が詰まってしまいます。これを「深部静脈血栓症」といいます。そして、足の静脈内にできた血栓が血管を通って肺に運ばれ、肺動脈をふさいでしまうことがあります。この状態が「肺血栓塞栓症」、つまりエコノミークラス症候群です。

エコノミークラス症候群を発症すると、足のむくみや腫れ、痛みなどの症状が現れます。重症化してしまうと激しい胸痛や呼吸困難に見舞われ、最悪の場合は死に至るケースも。そのため早期発見・早期治療が欠かせません。

エコノミークラス症候群は、飛行機のエコノミークラスのような狭い座席に座っている人が発症しやすいことから、この名前が付きました。しかし、実際には車や家のなかでも起こる可能性があります。

深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症
深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症について

出典:厚生労働省「深部静脈血栓症/肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)について」をもとに当社作成

・災害時のエコノミークラス症候群

災害時に避難所で生活したり車中泊をしたりすることで、エコノミークラス症候群の発症リスクが高まります。実際に災害関連死として報告されるケースのなかには、この疾患が原因であるものも少なくありません。災害時に避難する際は、災害への注意はもちろん、体調管理にも気をつけながら過ごすことが大切です。

避難所や車の中で避難生活をしていると、歩くことが少なくなり、長時間足を動かさずに過ごす時間が多くなります。とくに車の中で避難生活を送るときは、自動車のシートに座った姿勢のまま長時間眠らないようにしましょう。また、避難所ではできるだけ簡易ベッドなどを利用して体を伸ばし、体への負担を減らすことが重要です。

また災害時には、断水や排水管の破損などにより、トイレの水が流せなくなることもあります。トイレに行く回数をできる限り減らそうとするあまりに水分を十分に取らず、水分不足(脱水状態)になることも。これもエコノミークラス症候群の原因のひとつです。血流の流れを妨げないように、こまめな水分補給を心がけましょう。

本多医師 本多医師

本多医師からのアドバイス!

エコノミークラス症候群は、長時間同じ姿勢でいることにより、足の静脈に血の塊(血栓)ができ、それが肺に流れて肺の血管を詰まらせる病気です。

正式には「肺血栓塞栓症」と呼ばれ、肺血栓塞栓症を引き起こすと呼吸困難や胸の痛み、失神などが突然起こるほか、最悪の場合は命に関わることもあります。

飛行機や車といった長距離の移動だけでなく、災害時に車中泊をしたり、避難所で長時間座ったままで過ごしたりすることが、原因になる場合もあります。いずれの場合も、こまめに足を動かす、水分をしっかりとるといった予防が大切です。

エコノミークラス症候群の原因・なりやすい人

ふくらはぎを痛がる高齢者女性

座りっぱなしや水分不足にならないためには適度な運動とこまめな水分補給が大切

エコノミークラス症候群は、足の血流が悪くなることで血栓ができ、血の塊が肺に詰まってしまうことで発症します。長時間動かずに座り続けることや水分不足が原因とされますが、それ以外にも体質や既往歴、生活習慣などが関係していることもあります。

とくに、以下に当てはまる方は「深部静脈血栓症」「肺血栓塞栓症」を発症しやすいので注意が必要です。

【おもに発症しやすい方】

など

ここからは、エコノミークラス症候群を引き起こす原因や、発症リスクが高い人の特徴について解説します。ご自身に当てはまるかどうかを確認し、予防に役立てましょう。

・エコノミークラス症候群になる原因

前述のとおり、「血栓」ができることによって、エコノミークラス症候群が引き起こされます。血栓ができる原因は、おもに「血液の流れが悪くなる」「血液が固まりやすくなる」「血管の壁が傷つく」の3パターン。そして、それらの状態に陥りやすいのが「長時間の座りっぱなし」と「水分不足」です。

長時間の座りっぱなし(血行不良)

ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれ、筋肉の動きによって血液を心臓へ押し戻す役割があります。しかし長時間座ったままで足を動かさない状態が続くと、このポンプ機能が弱まり、血行が悪くなって血栓ができやすくなります。飛行機や車での長距離移動、長時間のデスクワークなどは注意が必要です。

とくに6時間を超える長時間のフライトでは、足の静脈に血栓ができやすくなる傾向があります。そのため、エコノミークラス症候群は「ロングフライト血栓症」とも呼ばれています。

水分不足(脱水)

飲み物を控えて十分に水分を取らないでいたり、汗で水分を失ったりすることで脱水状態になると、血液が濃くなって血栓ができやすくなります。たとえば、暑い日にエアコンを使用せずにいると、気づかないうちに過度な発汗による脱水状態になっていることがあるため注意しましょう。

しかし、エアコンが効いている室内も、喉の渇きを感じにくくなり結果的に水分不足に陥る場合があるので注意が必要です。乾燥による脱水も、血栓ができやすい原因となります。

・エコノミークラス症候群のリスクが高い人

以下のような特徴・危険因子を持つ方は、持っていない方と比べるとエコノミークラス症候群を発症しやすいため、注意が必要です。

妊娠中・出産直後の方

ホルモンバランスが変化することで血液が固まりやすくなり、血栓ができるリスクが高まります。とくに妊娠中の発症率は、妊娠していない人に比べて5倍以上ともいわれています。

がんに罹患している・治療歴がある方

がんによって血管を圧迫して血流が悪くなったり、がん細胞が血栓をつくりやすい物質を放出したりすることで血栓ができやすくなります。また、手術や抗がん剤治療、入院生活などのがん治療が要因となって血栓ができることもあります。

経口避妊薬(ピル)を服用中の方

低容量ピルなど一部の薬剤を服用することで血液中のエストロゲン濃度がアップし、血液が固まりやすくなるといわれています。

外傷や骨折の治療中の方

大きなケガや骨折が原因で入院すると、ベッドで過ごす時間が多くなったり活動が制限されたりするため、血流が滞りやすくなります。また、ふくらはぎの筋肉は、心臓に血液を送り返すポンプ作用の役割があります。そのため、ギプスで固定するなどして、ふくらはぎの筋肉を動かさなくなると血流が滞り、血栓が発生しやすくなります。

下肢に麻痺のある方

脳卒中などで下肢に麻痺がある場合、足の筋肉を思い通りに動かせないため、血流が滞りやすくなります。

血が固まりやすい体質の方

アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、抗リン脂質抗体症候群などの病気で血液が固まりやすい方は、血栓ができやすいため注意が必要です。

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エコノミークラス症候群の症状・対処法

胸の痛みを治療するために医師の診察を受ける男性患者

突然の息切れや激しい胸痛など、重症化する前に早めに医師に相談しましょう。

エコノミークラス症候群は、重症化すると死につながる可能性もある危険な病気です。「長時間座って足がむくんだだけ」と見過ごしてしまうと、深刻な事態になりかねません。そのため、早期の発見と適切な対処が重要です。

ここでは、エコノミークラス症候群の初期症状から重症化のサイン、具体的な検査方法や治療方法まで詳しく解説します。

・エコノミークラス症候群の症状

エコノミークラス症候群を発症すると、発症から経過した段階によって以下のような症状が現れます。症状が現れるまでの時間には個人差がありますが、一般的には飛行機や車で同じ姿勢を取り続けている最中から、その後1~2週間以内といわれています。

初期症状

血栓ができると、足のむくみ、腫れ、痛み、痺れ、だるさなどが現れます。また、血栓ができた部分の皮膚が赤や青紫色に変色したり、皮膚が熱を持ったりすることもあります。このような症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

重症化した場合の症状

血栓が肺に流れ込んで肺動脈をふさぐと、突然の息切れや激しい胸痛に見舞われます。さらに血圧が低下して呼吸困難や、失神などの意識障害を引き起こし、死に至る可能性も。これは大変危険な状態なので、周りの人に助けを求めることをためらわずに救急車を呼んでもらいましょう。

・エコノミークラス症候群の対処法

エコノミークラス症候群は、早期に発見し治療することで、重篤な合併症を防ぐことができます。とくに、足の腫れや痛み、息切れなどの症状が現れたら、速やかに呼吸器科・内科・循環器科・心臓血管外科などの医療機関を受診してください。その際は、足の痛みや腫れといった症状だけでなく、飛行機や車で長時間移動したあとであることや、デスクワークが多いことなど、思いあたる原因も一緒に伝えることが大切です。

また、激しい胸の痛みや呼吸困難などの重症化が疑われる場合は、迷わずに救急要請をしましょう。

検査方法

医療機関では、血液検査でDダイマー値を測定して血栓の有無を確認します。Dダイマーとは体の中で血栓が溶かされた時に生じる物質で、この数値が高い場合は血栓が多いことを示しています。また血液検査のほかに、胸部X線写真・心臓の超音波検査・CTスキャンなどの画像検査・心電図などを用いて診断します。肺血栓塞栓症が疑われた場合は、さらに緊急CT検査(造影CT)をおこないます。

治療方法

おもな治療方法は、これ以上血栓を作らせないように血液をサラサラにする「抗凝固療法」と、できた血栓を溶かす「血栓溶解療法」です。そのほか、カテーテル(細い管)で血栓を取り除く治療法もあります。また血栓の大きさや量によっては、血栓を除去する外科手術がおこなわれることもあります。

本多医師 本多医師

本多医師からのアドバイス!

エコノミークラス症候群のおもな症状は、下肢静脈に血栓ができた際のふくらはぎの腫れや痛み、肺血栓塞栓症に至ったときの突然の息切れ、胸の痛みなどで、重症になると命に関わることもあります。

診断はおもに造影CTによっておこなわれ、肺動脈に血栓があることを確認して、確定診断となります。多くの場合は入院での治療が必要です。

治療では、血栓を溶かす薬や、血液を固まりにくくする抗凝固薬が用いられますが、血栓の量や場所によっては、緊急で手術をおこなう場合もあります。

エコノミークラス症候群の予防・対策

着圧ストッキングを履いたふくらはぎのサイズをメジャーで測る医者

弾性ストッキングは血栓の形成を防ぎ、血液の流れをスムーズにする効果が期待できます。

エコノミークラス症候群は、水分が不足した状態で狭い座席に長時間座り続けることなどが要因で血行が悪くなり、血液が固まってできた血栓が肺動脈を詰まらせることで起こります。そのため、予防には足の血流を悪化させないことが大切です。

なお、症状の出方には個人差があり、血栓ができても無症状の場合もあるため、日頃から予防しておくことが大切です。

ここでは、手軽にできる予防方法やおすすめの予防グッズを紹介します。

・エコノミークラス症候群にならないためのポイント

血流を良くしてエコノミークラス症候群を予防するには、軽い体操やストレッチ運動、水分補給、禁煙など生活習慣の見直しをすることがポイントです。

エコノミークラス症候群の予防対策

エコノミークラス症候群の予防対策

軽い体操やストレッチ運動

エコノミークラス症候群の対策法として、ときどき軽い体操やストレッチ運動をおこないましょう。血流促進のため足の指でするグーパー体操、かかとの上げ下ろし運動などが効果的です。また、ふくらはぎを軽くもむだけでも効果があります。

エコノミークラス症候群予防のための代表的な足の運動

エコノミークラス症候群の予防のための足の運動

出典:厚生労働省「エコノミークラス症候群の予防のために」をもとに当社作成

また、たたみ一畳分のスペースでできる、以下のストレッチメニューもおすすめです。

【たたみ一畳分の広さでできるストレッチ】

こまめな水分補給

脱水状態になると体内の水分が不足して血液が固まりやすくなるので、十分な水分補給をおこないましょう。そうすると血液の流れが良くなり、血栓のリスクを下げることができます。目安は1日に1,000mL。カフェインを含まない麦茶や水が基本ですが、汗をかくとナトリウムなども失われるため、汗をかいたり、スポーツをした後は塩分が入ったスポーツドリンクを摂取したりするのがおすすめです。一方、アルコールには利尿作用があり、飲めば飲むほど脱水状態になって血液が固まりやすくなるため控えましょう。

できれば禁煙する

タバコに含まれるニコチンは、交感神経を刺激して血圧を上昇させ、血液を固まりやすくします。また喫煙により一酸化炭素や活性酸素が血管の内側を傷つけることも、血栓ができやすくなる原因です。禁煙することで2年以内に効果が出て、血栓ができにくくなるという報告もあるので、喫煙習慣のある方は禁煙に取り組みましょう。

ゆったりとした服装で、ベルトをきつく締めない

身体を締めつけて血流を停滞させないように、ゆったりとした洋服を選びましょう。また、座っている間はズボンのベルトをゆるめたり、ボタンを外したりするのも効果的です。

足を上げて寝る

足を心臓より高く上げることで、血液がスムーズに流れやすい状態をつくることができます。眠る前に仰向けの状態になって、手足を上にあげてブラブラと揺らすと効果的です。眠るときは、ふくらはぎの下に足枕やクッション、薄い座布団などを入れると良いでしょう。

・エコノミークラス症候群におすすめのグッズを紹介!

エコノミークラス症候群を予防するためには、血行促進をサポートするグッズやリラックス効果のあるグッズを使うのもおすすめです。

おすすめのグッズ例

エコノミークラス症候群を予防するグッズ

弾性ストッキング

弾性ストッキングは、足首から段階的に締めつけが強くなる医療用ストッキングです。静脈を圧迫することで足の血流をスムーズにし、血液が固まるのを防ぎます。

素材は一般的にナイロン・ポリウレタンの混紡ですが、かぶれにくい綿混やハイテク素材のものもあります。圧力の強さは弱圧・中圧・強圧の3タイプが一般的で、エコノミークラス症候群の予防には弱圧(20mmHg/26hPa)が推奨されています。

弾性ストッキングを着用するときは、足首やふくらはぎの周囲を正しく測り、適切なサイズと圧力を選ぶことが重要です。また、足に病気やケガがあるなどの理由で着用が適さない人もいます。弾性ストッキングを使用する際は、事前に専門医に相談すると安心でしょう。

フットレスト

フットレストに足やふくらはぎを乗せて足を高い位置にキープすることで、血液の上体への戻りがスムーズになります。また、疲労軽減やリラックス効果も期待できます。

ネックピロー

ネックピローがあれば首や肩にかかる負担を軽減でき、よりラクな姿勢で過ごすことができます。また、長時間同じ姿勢でいると生じるコリや痛みを和らげる効果もあります。飛行機のほか、シートがフラットにならない車で長時間過ごす際にもおすすめです。

まとめ

エコノミークラス症候群は、長時間同じ姿勢で座っていることで足に血栓ができ、肺に詰まる危険のある病気です。予防には、1~2時間おきに足を動かす、水分をこまめにとることが重要です。
また、足の指や足首の曲げ伸ばし、ふくらはぎのマッサージなど、座ったままできる運動も効果的です。予防グッズとしては、血流を促す弾性ストッキングやフットレスト、リラックスした姿勢をとるためのネックピローなどがあります。
長時間の移動や避難所などで同じ体勢が続く場合には、意識的に足を動かしたり、これらを活用したりすることが大切です。

監修者情報

本多 洋介(ほんだ ようすけ) 本多 洋介(ほんだ ようすけ)

監修者

医師 本多 洋介(ほんだ ようすけ)

総合内科専門医・循環器内科専門医。Myクリニック 本多内科医院(神奈川県横浜市)院長。
2009年、群馬大学医学部卒。伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院を経て、2024年6月より現職。
共著書として『PCI㊙裏技テクニック』(メジカルビュー社)、『超音波ガイドEVT』(メジカルビュー社)など。

2509484-2609