Rakuten Mobile 最強プラン
高齢者の災害対策とは?今すぐ必要な備えや家族がやることを解説

高齢者の災害対策とは?今すぐ必要な備えや家族がやることを解説

公開日:2025年11月20日

大きな地震や豪雨に見舞われたら、ご自身はもちろん家族の命も守らなくてはいけません。しかしご自身または家族が高齢だった場合、無事に避難するにはどのような備えが必要なのでしょうか?

この記事では、高齢者ご本人とその家族に向けて、災害から命を守るために必要な備えを防災士がわかりやすく解説。事前の準備から災害発生時の具体的な行動のポイントまで、必要な情報をまとめてご紹介します。万が一のときに慌てないように、今できる備えを家族全員で確認しておきましょう。

高齢者が災害で直面する課題・リスクとは?

高齢者の増加にともない、災害によって高齢者が被災するケースが多く発生しています。高齢の方は「逃げ遅れ」が発生しやすく、死亡率もほかの年代と比べて高い傾向にあります。実際に東日本大震災のときは、亡くなった方の6割以上が60歳以上の高齢者だったそうです。

その理由として、高齢者特有の課題やリスクがあります。たとえば身体機能や認知機能の低下、情報の受け取りにくさといった問題です。災害に対する備えが不十分だと、いざというときに困ることが多く、結果的に命が危険にさらされるかもしれません。そこで、まずは災害によって高齢の方がどんな問題に直面するのか、具体的にみていきましょう。

災害時に高齢者が直面しやすい問題
災害時に高齢者が直面しやすい問題 災害時に高齢者が直面しやすい問題

・①身体機能が低下している場合

加齢により視力や聴力、運動能力が衰えると、避難行動に困難をともないます。たとえば地震や台風の後には、散乱したガレキなどの障害物を避けながら移動しなければいけない可能性があります。また、停電でエレベーターが止まったら、階段の上り下りが必要となるでしょう。しかし、身体機能が低下していると、階段の上り下りなどの移動が困難になるだけでなく、つまずきや転倒といったケガのリスクが一気に高まります。

・②持病がある場合

持病があることも大きなリスクです。災害発生時には薬の供給がストップし、いつも飲んでいる薬が手に入らなくなる可能性があります。継続的な医療ケアが必要な場合は、避難先での対応が課題となるでしょう。さらに災害時のストレスや急激な環境変化により、体調が悪化する恐れもあります。

・③認知機能が低下している場合

高齢の方のなかには、認知機能の低下により判断力や記憶力が衰えている方もいます。その場合、災害情報を理解したり、状況に応じた適切な判断をしたりすることが難しくなる可能性があります。たとえば避難場所や避難経路を忘れてしまうかもしれません。また避難指示が理解できず、危険な場所にとどまってしまうケースも考えられます。

・④情報伝達が困難な場合

災害時にはおもにインターネットやテレビ、ラジオなどで情報を入手することになります。しかし、高齢の方はスマートフォンなどの情報機器に不慣れなことが多いため、インターネットで災害情報を入手するのはハードルが高いケースもあるでしょう。また、難聴を抱えている方はテレビやラジオが聴き取りにくく、状況を把握するのが難しいことも。さらに、視覚に支障のある方はテレビではわかりにくいため、ラジオが頼りになります。このように情報収集の手段が限られることで、必要な情報が十分に手に入らない可能性があります。

・⑤要介護の場合

高齢で、なおかつ要介護の方や身体が不自由な方は、災害時に自力で避難することが難しいため、逃げ遅れるリスクが高まります。安全な場所へ避難するには、家族や介護者の協力が不可欠です。しかし、いざというときに家族や介護者がそばにいるとは限りません。また、その家族も高齢であるなど、たとえそばにいても避難が難しいケースもあります。

・⑥単身世帯の場合

「令和6年版高齢社会白書」によると、65歳以上でひとり暮らしの方は年々増加傾向にあり、2050年には男性26.1%、女性29.3%になる見込みです。「家族が遠方にいる」「身寄りがない」といった状況では、災害時に支援を受けにくくなるでしょう。また、高齢の方のなかには、体力的に自力での避難が難しい方も多いでしょう。したがって、高齢の方がひとりで暮らすことでさらに避難行動が困難になるリスクが考えられます。

災害から身を守る!高齢者に必要な住まいの安全対策とは?

災害による被害を少なくするためには、事前の備えが欠かせません。とくに高齢の方は、運動能力や判断力の低下により避難に時間がかかりやすいため、日頃から住まいの防災対策に取り組んでおくことが重要です。たとえば、家具の固定やガラス飛散防止フィルムの設置など、わずかな工夫でできる備えが、命を守ることにつながります。

そこで、ここでは災害時の被害を少しでも小さくするために、今から始められる住まいの防災対策と具体的な取り組みをご紹介します。

・家具の固定

地震の際に家具が転倒すると、大きなケガや命の危険につながります。家具はあらかじめ壁などに固定しておきましょう。固定する際は以下の器具が有効です。家具の重さや設置場所にあわせて選び、適切に取り付けましょう。

家具の固定の例
家具の固定例

おもな家具の固定器具

L字金具 家具と壁を木ネジやボルトによって固定する。家具や壁、器具に十分な強度が必要です。壁に強度が足りない場合(石膏ボードを含めて)は、あて板をしてネジが抜けないようにする。
突っ張り棒 家具と天井の間に置き、ネジを使わずに固定する。家具と天井に十分な強度が必要。家具の下に挟むストッパー式の器具を併用すると効果的。
耐震マット(耐震ジェルマット) 粘着性のゲル状のマットで、家具の下に置いて床と接着させる。比較的小さな家具や家電に効果的。家具や家電の重さなどにあわせて大きさを変えるとよい。
扉の開放防止器具 食器棚などの観音扉に設置し、地震の揺れで扉が開いて収納物が散乱するのを防ぐ。粘着タイプやチェーンタイプなど、さまざまなタイプがある。本棚など重いものが入った家具にはネジ固定式がよい。
ガラス飛散防止フィルム 地震の際にガラスが飛び散ってケガをすることを防ぐ。窓ガラスや家具のガラス戸には、あらかじめガラス飛散防止フィルムを貼り付けておく。霧吹きなどでガラスとフィルムに水を十分に吹きかけてから貼り付ける。

ガラス飛散防止フィルムは、ガラスの両面に貼ることで効果がアップしますが、片面に貼る場合は、窓ガラスは内側、家具類は外側にフィルムを貼りましょう。ご自身で貼るときは、ホームセンターなどでフィルムを購入することができます。貼るときにシワになったり空気が入ったりすると、効果が落ちる恐れもあるため、ご自身で貼るのが難しい場合は、プロに依頼すると安心です。

・室内での転倒防止

高齢になるにつれて転びやすくなるため、骨折などのケガをしやすくなります。場合によっては、骨折がきっかけで寝たきりになってしまうこともあるため、転倒防止対策はとても重要です。家のなかの段差を減らすなどして、少しでも危険を減らしておきましょう。

室内での転倒防止器具

滑り止めマット・手すり めくれやすいカーペットや玄関マットの下、階段、浴室などには滑り止めマットを敷く。その際、使う場所や素材にあわせて滑り止めマットを選ぶことが大切。また、玄関や階段、廊下には手すりを付けておくと安心。手すりは高さや握りやすさを考慮して選ぶとよい。
すのこ・踏み台・スロープ つまずくのを防ぐために、段差を解消しておくことも重要。普段から床にものを置かないように心がける。また、玄関や浴室など段差が高い場所には、すのこや踏み台、スロープなどでできるだけ段差を小さくしておくと、転倒のリスクを減らすことができる。

手すりの取り付けや段差の解消など、住宅の改修を専門業者へ依頼することもあるでしょう。これらの工事にかかる費用については、要介護認定を受けている方であれば介護保険制度の給付対象となり、自己負担額が軽減される可能性もあるため、詳しくは担当のケアマネジャーやお住まいの市区町村にお問い合わせください。

・感震ブレーカーの設置

地震によって火災が発生することもあります。実は地震による火災の原因は、半分以上が電気関係の出火です。そこで効果的なのが感震ブレーカーの設置です。感震ブレーカーは、地震の際に一定の震度で電気を自動的に遮断する器具で、不在のときや、避難時などブレーカーを落とす余裕がないときに、電気火災を防止するのに役立ちます。

ただし、感震ブレーカーのタイプによってはデメリットもあり、電気器具や照明類が一斉に止まってしまう場合もあります。命に関わる医療用機器を利用している方は、必ずバッテリーを準備しておきましょう。また、感震ブレーカーには電気工事が必要なものもあります。自治体によっては購入や設置する際に助成金が出るところもあるので、事前に確認してみましょう。

・寝室の安全対策

寝ているときに家具が倒れると、非常に危険です。寝室には大きな家具をできるだけ置かないようにしましょう。やむをえず置く場合は、もし倒れてきても寝ている人が下敷きにならないように配置を工夫しましょう。

寝室の安全な家具の配置
寝室の安全な家具配置例

・日頃からの整理整頓

家のなかにものがあふれていると、いざというときに避難の妨げとなります。いらないものは思い切って処分し、日頃から整理整頓を心がけましょう。ポイントは、家具の少ないスペースをつくることです。家具の代わりに押し入れやクローゼットを活用することで、転倒や落下のリスクを減らすことができます。また、避難経路を確保するため、出入り口や通路などにものを置かないようにしましょう。

栗栖防災士 栗栖防災士

栗栖防災士からのアドバイス!

高齢者の防災対策として自治体サービスや助成金の活用も検討を

高齢の方は、災害時に被害を受けやすい状況にあるため、自治体も高齢者への防災対策支援が重要であると考えています。たとえば、姫路市の場合「見守り安心サポート事業(安心コール)」が実施されています。これは、安心コール(緊急通報機器)を貸与し、緊急時に安心コールの緊急ボタンを押せば24時間365日看護師が待機するコールセンターにつながるというサービスで、状況に応じて救急要請することで、速やかな救助をおこないます。月に1回コールセンターから健康状態の確認などもおこなっているほか、厚生労働省では「高齢者向け給付金」も支給しています。

非常用持ち出し袋の準備、高齢者が必要なものは?

非常用持ち出し袋と非常用防災グッズ

非常用持ち出し袋の中に、高齢者ならではのグッズもプラスしておきたい

高齢の方にとっては避難生活が大きな負担になることもあるため、非常時に備えた持ち物の準備が重要となります。避難時に必要となる持ち物は、災害発生の初期段階から避難生活が長期化するまで、それぞれの段階によって変わります。自宅の備蓄品を以下のように0次品〜3次品に分けて備えましょう。

避難生活の段階によって必要となる物資

0次品…いつも携帯するもの
1次品…緊急避難時にすぐ持ち出すもの
2次品…災害発生から3日間を生き抜くためのもの(できれば7日分)
3次品…長引く避難生活をできるだけ快適に過ごすためのもの(約30日分)

ここでは、緊急避難時にすぐに持ち出す「1次品」について、高齢者が必要なものや備えのポイントを紹介します。

・まずは非常用持ち出し袋の準備

災害発生時は避難までの時間が限られています。非常用持ち出し袋は、命を守るための第一歩です。

非常用持ち出し袋はリュック型のほかにキャリーケース型もあります。高齢者ご本人の体力などにあわせて、扱いやすいタイプを選びましょう。基本的な1次品を準備したうえで、ご自身に必要な持ち物も入れます。保管場所は玄関や寝室など、すぐに持ち出せる場所に置いておきましょう。また、緊急時に「どこにあるかわからない」とならないように、保管場所や中身を家族と共有しておくことも大切です。
以下に、基本的な1次品をまとめました。

緊急避難時にすぐ持ち出すもの(1次品)
緊急避難時にすぐ持ち出すもの(1次品) 緊急避難時にすぐ持ち出すもの(1次品)

「防災情報のページ」(内閣府)をもとに作成

・高齢者に必要となることが多い非常用防災グッズ

基本的な1次品を準備したら、ご自身に必要なアイテムを加えていきます。以下は高齢の方にとくに用意しておいていただきたい非常用防災グッズです。

“高齢者ならでは”の非常用防災グッズ

グッズ 詳細
持病の薬 避難先で薬が手に入らない可能性を考えて最低3日分は用意、できれば1週間分あれば安心。
お薬手帳のコピー 薬を処方してもらう際、常用している薬の種類・量がすぐにわかるように必ず準備を。最新の情報をスマートフォンで写真に撮っておくと便利。
老眼鏡 ものが見えにくいと、避難生活が困難に。避難時に壊れる可能性もあるため、100円ショップで販売している老眼鏡を数本用意しておくとよい。
大人用紙パンツ・吸水パッド 避難所ではトイレが混んでしまい、なかなか利用できなかったり、水洗トイレが使用できなくなったりする可能性も。そのため普段使わない人も、用意しておくと安心。処理用の袋も一緒に準備を。
補聴器 耳が聞こえにくいと、緊急時の情報収集や避難所での生活が困難に。電池も忘れずに準備する。聴覚障害のある方は「災害時要援護者名簿」など自治体の支援制度にも登録を
入れ歯洗浄剤 入れ歯が汚れると、細菌が増殖して誤嚥性肺炎などのリスクが高まる。水がない場合でも使える入れ歯洗浄シートなどを準備する。
介護食 噛む力や飲み込む力が低下している方は「ゼリー飲料・ゼリー食」や「やわらかいおかゆ・雑炊、パンがゆ、ペーストご飯」など食べやすい食品を準備する。
清潔面 災害時はしばらくお風呂に入れない可能性もあるため、体を清潔に保つアイテムを準備する。厚手の体拭きタオルやウェットティッシュ、除菌スプレーや手指消毒剤、おむつやマスクも重要。
緊急時に普段の杖が持ち出せない、ケガをして必要になることも。非常用として、折りたたみの杖を入れておくと便利。
着替え 下着、肌着、靴下、動きやすい洋服上下などを最低3日分、できれば1週間分用意。冬は防寒着も準備し、ルームシューズもあると便利。
医療機器の電源や物品 人工呼吸器などの医療機器を使用している方は、電源や物品の備えを忘れずに。主治医に確認するなどして、家族も非常時の対策を把握しておく。

・季節ごとの必需品もしっかり準備

災害は季節をとわずやってきます。一般的に高齢者は体温調節機能が低下しやすく、暑さや寒さの影響を受けやすいため、熱中症や低体温症に注意が必要です。したがって、非常用持ち出し袋の中身も、季節ごとのリスクを意識して準備することが大切です。

たとえば、夏は熱中症や脱水症状に注意しましょう。避難所などでは空調が十分でない場合もあるため、冷却シートなどがあるとよいでしょう。また、高齢者は喉の渇きを感じにくくなることもあるため、経口補水液などで水分と塩分を意識して摂取することも大切です。

一方、冬は低体温症に注意が必要です。寒さは体力を奪う原因にもなるので、防寒着やカイロを準備するなど、寒さ対策を意識しましょう。

栗栖防災士 栗栖防災士

栗栖防災士からのアドバイス!

非常用防災グッズに格納する際にチェックしておきたいこと

高齢者用の非常用持ち出し袋には、自分で運び出せるリュックなどが最適です。ここまで紹介した「高齢者ならではの非常用防災グッズ」を、上手く格納しておきましょう。
とくに冬季の着替えは最低3日分に加え防寒着も準備する必要があるため、荷物が多くなることがあります。複数回使えるもの(重ね着対応できる服やリバーシブルなど)が、荷物の削減に有効です。靴下やパンツ、下着などはくるっと巻いて、隙間に入れるなど工夫しましょう。
また、毎日飲んでいる薬も、意外と有効期限を見落としがちです。薬の有効期限もしっかり確認しておくことも大切です。

長引く避難生活に!高齢者が準備するべきものは?

防災避難キットや備蓄品の準備

高齢の方の備蓄品の点検は、ご家族もサポートをすると見落としが防げる。

地震や台風などの大規模災害では、ライフラインが停止し、避難生活が長引くケースも少なくありません。とくに高齢の方は体調や持病の心配があるため、備蓄品の準備は念入りにおこないましょう。
以下は、災害が長引いたときのために用意しておきたい備蓄品リスト(2次品・3次品)です。

災害が長引くときの備蓄品(2次品・3次品)
災害発生から3日間を生き抜くためのもの(2次品) 災害発生から3日間を生き抜くためのもの(2次品)

「防災情報のページ」(内閣府) をもとに作成

長引く避難生活を快適に過ごすためのもの(3次品) 長引く避難生活を快適に過ごすためのもの(3次品)

「防災情報のページ」(内閣府) をもとに作成

備蓄品は一度揃えたら終わりではありません。消費期限切れのものはないか、季節に合わないものはないかなど、定期的に見直して入れ替えましょう。その際におすすめなのが「ローリングストック法」という普段使っている食料や日用品を少し多めに保管し、使った分を買い足していく方法です。いざというときでも消費期限切れの心配がなく、食べ慣れたものを口にすることができます。

また、備蓄品の点検は、高齢者ご本人だけでは忘れてしまうことや見落としてしまうことがあります。家族がサポートしながら定期的にチェックしましょう。

高齢者が知っておきたい、災害時の連絡・安否確認の方法は?

災害が発生した際に家族と一緒にいるとは限りません。そういったときのために、災害時の連絡手段や安否確認の方法を確認しておきましょう。とくに高齢の方は、スマートフォンやインターネットの操作に困ることもあるため、事前の準備と周囲の支援が欠かせません。事前に連絡手段や安否確認の方法を家族と話し合い、利用方法の練習をしておきましょう。
災害時には停電が発生したり、通信規制がおこなわれたりすることもあるため、複数の連絡手段や安否確認の方法を考えておくのがポイントです。

高齢の方の場合は体の不自由な方も多く、要介護の方もいるでしょう。安否確認をする際は、一般的な方法だけでなく、直接訪問や地域の見守りなども意識しておく必要があります。

ここでは電話や災害伝言ダイヤルなどの一般的な方法から、自治体の安否確認サービスといった高齢者向けの方法まで、さまざまな方法を紹介します。高齢者ご本人の状況にあわせて活用してください。

高齢者が知っておきたい災害時の連絡手段・安否確認方法

以下でそれぞれについてみていきましょう。

・直接訪問

直接訪問は高齢の方にとって有効な手段のひとつです。メールなどに慣れていない高齢者の場合、電話が不通になると代替手段が使えず、連絡がつきにくい状況が発生しやすくなります。可能であれば、家族や親族、近隣住民が直接訪問して安否を確認しましょう。訪問する際には、安全に配慮し、地域の状況や避難指示などを事前に確認することが重要です。

・電話

高齢者ご自身の固定電話や携帯電話、スマートフォンに、家族や支援者の緊急連絡先を登録しておき、すぐに連絡できるように備えておきましょう。ただし災害時は回線が混みあうため、電話がつながりにくくなる可能性もあります。その際は、時間を置いて何度かかけ直してみましょう。

また、災害時は音声通話よりもデータ通信(インターネット回線)の方が、比較的つながりやすいともいわれています。携帯電話やスマートフォンを利用している場合は、メールやLINEなどを活用しましょう。さらに、あらかじめ緊急速報メールの受信設定もしておくと、災害情報をリアルタイムで受け取ることができます。

・災害用伝言ダイヤル(171)

電話がつながらない場合は、災害用伝言ダイヤルが役に立ちます。災害用伝言ダイヤルは、NTTが提供している、災害時に使える声の伝言板です。固定電話・携帯電話・スマートフォン・公衆電話から「171」をダイヤルし、連絡を取りたい電話番号を入れると、伝言の録音と再生ができます。家族で利用方法を確認し、使い方を練習しておきましょう。
毎月1日と15日は体験利用ができるので、災害時に落ち着いて使えるように、自分の携帯電話などから実際に掛けてみることをおすすめします。

・災害用伝言板(web171)

携帯電話やスマートフォンからアクセスし、文字で伝言を残すことができます。高齢のご家族に登録方法を教えたり、代わりに登録したりするなどして、家族と共有しておきましょう。また災害用伝言ダイヤル(171)と同じように、毎月1日と15日は体験利用ができます。

・インターネット・SNS

インターネットを使える方や、普段からSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を利用している方は、X(旧Twitter)、LINE、FacebookなどのSNSも有効な連絡手段です。地域の状況などの細かい情報をキャッチできるほか、ひとつのメッセージで複数人に伝えることができます。既読機能などがついているものもあり、相手が読んだか確実にわかるのもメリットです。

たとえばLINEでは、震度6以上などの大規模な災害が起こった際に「LINE安否確認」が画面に表示され、タップするとLINEに登録している人に状況を伝えることができます。またFacebookの「セーフティチェック」では、Facebookで友達になっている相手に自分の無事を報告したり、相手の安否を確認したりすることができます。こうした機能の使い方を、あらかじめ知っておくことで、いざというときに安否確認がしやすくなるでしょう。

・自治体の安否確認サービスや見守りネットワーク

自治体によっては、独自の方法で安否確認をおこなっているところがあります。以下は一例になります。

自治体の取り組みの例

東京都品川区 災害時自動安否確認システムを導入している。あらかじめ電話番号を登録しておくと、災害時に避難指示や災害発生情報などを知らせてくれる。
石川県加賀市 民生委員や自治会、ボランティア団体などが連携して、ひとり暮らしの高齢者などを見守る制度がある。あらかじめ自分の情報を名簿に登録しておくことで、災害時の安否確認もおこなってもらえる。
神奈川県藤沢市 居宅介護支援事業所と連携し、災害時に介護保険サービス利用者の安否確認をおこなう体制を整えている。

このように自治体ごとに、さまざまな安否確認の取り組みがあります。お住まいの自治体の制度を事前に確認して、必要に応じて情報登録などをしておきましょう。

・緊急連絡カード

氏名、住所、連絡先、持病、服用薬などを記載するカードです。高齢の方が常に携帯しておけば、災害時に周囲の人が確認することで素早い救助につながります。

・GPS機能付きの端末

高齢の方がGPS機能付きの端末を身につけておけば、いざというときに高齢者ご本人の位置情報を家族や支援者も把握できます。また、緊急時に通報することが可能なものもあります。

・AIを活用した安否確認サービス

AIを活用したサービスなら、センサーやカメラで高齢のご家族の生活状況をリアルタイムに把握することが可能です。異常があれば家族や支援者に通知してくれるものもあるため、万が一のときに役立つでしょう。

栗栖防災士 栗栖防災士

栗栖防災士からのアドバイス!

高齢者も知っておきたい!スマートフォンと防災対策

高齢の方のなかには、スマートフォンの操作が難しいと考える方もいるかもしれません。しかし最近では、防災においても役立つ使いやすさと機能が重視されており、各メーカーも高齢者に最適なスマートフォンの開発をおこない、販売がすすめられています。

スマートフォンがあれば、防災に役立つアプリもインストールでき、災害通知や避難所の確認、家族との安否確認などに役立ちます。高齢者のご家族がサポートしてスマートフォンを導入しておけば、災害時に備えることができるでしょう。事前に、家族全員で「171」や「web171」の体験をして、もしもに備えておくことも大切です。

地域の防災情報、高齢者が入手する方法とは?

地域の防災情報を高齢者が入手する方法

テレビなどからの防災情報に加え、地域のつながりから得られる情報も日ごろから意識を。

災害の状況は刻一刻と変化します。災害が起きたときは、正確な情報をいかに早く入手できるかが命を守るカギとなります。テレビやラジオのほか、スマートフォンが使える方は防災サイトやアプリなどで情報を入手しましょう。

ここでは、高齢の方が地域の防災情報を入手するための方法を紹介します。おもに以下のとおりです。

高齢者が防災情報を入手するおもな方法

以下でそれぞれについてみていきましょう。

・テレビ、ラジオ

高齢の方にとって一般的なのはテレビとラジオでしょう。NHKのデータ放送では、リモコンの「dボタン」を押すことで常に防災情報を確認することが可能です。

・自治体の防災ウェブページ

インターネットが使える方は、自治体の防災ウェブページへアクセスしましょう。災害に関する最新情報、避難や支援に関する情報がまとめられています。また自治体のなかには、防災情報メールを配信しているところもあります。

・防災アプリ

スマートフォンに防災アプリをダウンロードしておくと、高齢の方がいざというときに素早く情報を手に入れることができます。必要に応じて高齢者のご家族がサポートしながらインストールし、操作方法などを練習しておきましょう。

・防災無線

地域の情報を得るには防災無線が役立ちますが、高齢の方には聞き取りにくいこともあります。そのため、政府は戸別受信機や自動起動ラジオの配置を推奨しています。

・地域の防災訓練、イベントへの参加

地域の防災訓練などに参加して、防災に関する知識を蓄えておくことも大切です。しかし、高齢の方のなかには参加することに対してハードルが高いと感じる方もいるでしょう。高齢者のご家族は高齢者ご本人に対してそのメリットを伝える、会場まで付き添うなどして参加を促してみるとよいでしょう。

栗栖防災士 栗栖防災士

栗栖防災士からのアドバイス!

高齢者が災害情報を入手する際の注意点

高齢の方の情報入手はご自身でおこなうのみではなく、近隣の方からも情報を得ることが重要です。たとえば、地域の集まりに積極的に参加して、スマートフォンの使い方を学んだり、LINEなどの交換をしたりすることで、さまざまな情報を得ることができます。また、地域の防災訓練に参加して共助の和を広げておけば、災害時にも効果的です。

とくに周知していきたいのが、多くの高齢の方が「ひとりで何でもできる」と思うことは、大きな間違いということです。ご自身が高齢であれば、頼れるものは全て頼ってください。そして、高齢のご両親・親族がいれば、そのように伝えてあげましょう。

避難場所・避難経路について高齢者が事前に確認することは?

高齢の方は体力的な不安を抱えやすく、避難に時間がかかりやすいため、入念な備えが重要です。避難場所や避難経路を把握しておくことはもちろん、家族との連絡手段や集合場所などもあらかじめ話し合っておきましょう。また、高齢の方の避難を支えるには、近隣住民の協力も大きな力になります。

避難場所・避難経路について高齢者が事前に確認すること

いざというときのために災害時の避難について家族で話し合っておくことが大切

ここでは、高齢者ご本人やその家族が、いざというときに慌てることなく安全に避難できるように確認しておくべきポイントを紹介します。

高齢者が事前に確認しておきたい避難場所・避難経路のポイント

以下でそれぞれについてみていきましょう。

・地域の避難場所の確認

自治体のウェブページには、災害ごとの指定避難場所や避難所の情報が掲載されています。また、地域ごとのハザードマップには、浸水や土砂災害などの危険区域とあわせて、避難場所も確認できるので、事前に必ずチェックしておきましょう。

一般の避難所とは別に「福祉避難所」もあります。福祉避難所は高齢者や障害のある方など、特別な配慮が必要な方を受け入れてくれる施設です。一般の避難所で健康調査などを受けてから福祉避難所へ移動できるため、自宅から直接避難することはできません。

避難所の種類

避難場所 緊急的に避難する施設・場所
指定緊急避難場所 学校のグラウンドや体育館、堅牢な建築物など
広域避難場所 大規模な避難場所。大きな公園や大学など
一時避難場所 小規模な避難場所。公園など
避難所 災害発生後の一定期間、被災者等が生活をする施設
指定避難所 学校の体育館や公民館など
福祉避難所 災害時要援護者が生活拠点として滞在するところ

※避難所は災害発生後すぐに避難所が開設されるとは限らない

・避難経路の確認

ハザードマップでは避難経路も確認できます。避難経路は地図上で確認するだけでなく、実際に歩いて確かめておきましょう。段差や坂道がないかなどを確認し、高齢の方にとって安全なルートを選ぶことが重要です。さらに実際に歩いて所要時間を測ることで、避難時にどのくらいの時間がかかるかも把握できます。

また、災害は夜に起こることもあります。夜間の避難に備えて、照明や街灯が少ない危険な場所はないかなどもチェックしておきましょう。災害時にはいつもの道が通れない可能性もあるため、避難ルートは複数準備しておくと安心です。

・高齢者と家族の連絡方法、集合場所の決定

家族と同居している・していないに関わらず、災害時には、家族が離ればなれになる可能性があるため、連絡手段や集合場所を事前に家族で話し合い、決めておくことが重要です。携帯電話がつながりにくくなるケースに備え、前述の災害用伝言ダイヤル(171)やSNSの利用など、複数の方法を確保しておきましょう。

また、親戚や友人、かかりつけの医療機関などの緊急連絡先リストを作成し、家族全員で共有しておくと、迅速な支援につながります。

・近隣住民との協力体制づくり

災害時には、国がおこなう「公助」、ご自身がおこなう「自助」、隣近所や地域で助け合う「共助」が重要です。とくにひとり暮らしの高齢の方や体の不自由な方は、避難の際に手助けが必要となることが多く、近隣住民の協力が欠かせません。

日頃から顔見知りになっておくことで、いざというときにお互いの安否確認や手助けがしやすくなります。積極的に声かけや挨拶などをして、良好な関係を築くように心がけましょう。地域のイベントや自治会に参加するのもおすすめです。

まとめ

高齢の方の災害対策は、ひとりでおこなうのは大変難しいのが現実です。たとえば、家具の固定などは、誰かに頼まないと難しいことが多いと思いますし、自治体のサービスもケアマネジャーが一緒であれば、理解しやすいでしょう。
また、ご自身が持ち出す非常用の持ち出し袋の購入や、必要品の格納・スマートフォンの購入や使用する際のアドバイスにおいても、家族・友人・地域のサポートが役立ちます。

そのため、高齢の方は「ひとりでなんでもできる」と思わないで、家族はもちろんのこと、近隣の方々のサポートが受けられる環境を整えることから始めてみてください。自助だけでなく、共助によるサポートを多く得られるようにしておくことが大切です。

監修者情報

栗栖 成之(くりす しげゆき)

防災士 
栗栖 成之(くりす しげゆき)

防災士/ひょうご防災リーダー/ひょうご防災特別推進員/姫路市防災リーダー会員。長年、自治体のハザードマップ作成業務に携わり、洪水・土砂災害・地震・津波・高潮など、あらゆるハザードマップを作成。2014年よりWebライターとしても活動をはじめ、Yahoo!ニュースエキスパートをはじめ、多数のメディアで防災にまつわる情報を発信している。

2510520-2610