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公開日:2025年2月27日
2024年に雇用保険制度が改正され、段階的に施行されます。大きなポイントは雇用保険の適用拡大です。2028年からは、週10時間以上働くパートやアルバイトの方も雇用保険に加入できるようになります。新たな加入対象となる方は500万人以上とも見込まれており、多くの方がより安心して働ける環境が整うでしょう。また教育訓練給付も2024年から2025年にかけて拡充され、リスキリング(学び直し)への支援がさらに手厚くなります。
今回の改正により、私たちの働き方にはどのような影響があるのでしょうか?この記事では雇用保険制度の概要と改正のポイントをわかりやすく解説します。
2024年5月に雇用保険制度が改正され、働く人々を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。国は、働き方の多様化が進む中で、年齢や性別、正規雇用・非正規雇用といった雇用形態にかかわらず、能力開発やセーフティネットを利用できるよう環境整備を進める方針です。また、経済政策の柱として掲げてきた「人への投資」を強化するため、職業訓練やリスキリングなどの支援も拡充する方針も示しています。
今回の改正で大きなポイントとなるのは、雇用保険の適用拡大です。2028年からは、週10時間以上働くパートやアルバイトの方も雇用保険に加入できるようになります。また2024年から2025年にかけては失業手当の制限が緩和され、教育訓練やリスキリングへの支援もさらに拡充されます。
まずは「雇用保険とは何か」という基本から、改正内容についてわかりやすく解説します。
雇用保険とは、失業時のサポートや、育児・介護中に支援を受けられる保険です。企業で働く人を対象とした社会保険のひとつで、生活や雇用の安定を目的としています。そのほか、社会保険には「医療保険」「年金保険」「介護保険」「労災保険」が含まれます。
雇用保険のおもな改正点は以下の4つです。2024年10月、2025年10月、2028年10月と、段階的に施行されます。
改正内容 | 施行日 |
---|---|
① 雇用保険の適用拡大 | 2028年10月1日 |
② 教育訓練やリスキリング支援の充実 | 2024年10月1日、2025年10月1日 |
③ 育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保 | 2024年5月17日、2025年4月1日 |
④ 出生後休業支援給付の創設、育児時短就業給付の創設 | 2025年4月1日 |
上記の①~④について、それぞれ解説します。
近年、デジタル化などによる社会の変化や、人口減少にともなう労働力不足が急速に進んでいます。国は経済成長を続けるためには「人の力」が不可欠として、「人への投資」を掲げてきました。その一環として、働く人を支えるセーフティネットを整備し、誰もが安心して働ける環境づくりを進めています。
2028年からは、雇用保険の加入要件が適用拡大されます。1週間の所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に変更されることで、パートやアルバイトなど短時間勤務の方も雇用保険に加入できるようになります。これにより、育児休業給付や失業給付などを受け取ることが可能になります。
雇用保険に加入することで、育児休業給付、失業時の基本手当、教育訓練給付などを受け取ることができます。現在の加入対象は、1週間の所定労働時間が「20時間以上」の方です。
しかし2028年10月からは「10時間以上」に緩和されます。これによりパートやアルバイトなど短時間勤務の多くの方が、給付金を受け取ることができるようになります。また被保険者期間のカウント方法や、失業認定の基準も、以下のように変更されます。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
被保険者期間の算定基準 | 賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上または賃金の支払いの基礎となった労働時間数が80時間以上ある場合を1月とカウント | 賃金の支払いの基礎となった日数が6日以上または賃金の支払いの基礎となった労働時間数が40時間以上ある場合を1月とカウント |
失業認定基準 | 労働した場合であっても1日の労働時間が4時間未満にとどまる場合は失業日と認定 | 労働した場合であっても1日の労働時間が2時間未満にとどまる場合は失業日と認定 |
法定の賃金日額の下限額(①)、最低賃金日額(②) |
① 屈折点(給付率が80%となる点)の額の1/2 ② 最低賃金(全国加重平均)で週20時間働いた場合を基礎として設定 |
① 屈折点(給付率が80%となる点)の額の1/4 ② 最低賃金(全国加重平均)で週10時間働いた場合を基礎として設定 |
また国によると、週の労働時間が10〜20時間の人は、2023年時点で約506万人。今回の改正で、新たに雇用保険に加入対象となる人は500万人を超えると推定しています。
2028年10月以降は、今まで雇用保険の対象外だった「1週間の所定労働時間10時間~20時間」のパートタイマーやアルバイトの人が新たに雇用保険に加入することになります。
メリットは、雇用保険に加入することで基本手当(失業給付)、育児休業給付、介護休業給付、教育訓練給付金などを受け取ることができる可能性が出てくることです。失業や休業、スキルアップの際の金銭的なサポートを得やすくなり、働きやすくなる効果が期待できます。
一方で、雇用保険の保険料を負担する必要が出てくる点がデメリットです。雇用保険の保険料は事業主(勤務先)と折半で、本人が負担するのは原則0.6%です。給与が月5万円の人なら5万円×0.6%=月300円が目安です。
国が将来にわたって成長を続けるためには、一人ひとりが力を発揮し、希望に応じて多様な働き方を選べる環境を整えることが重要です。そのため、国は職業訓練や生涯教育などを重視し、教育訓練給付金の拡充を決定しました。
教育訓練給付金とは、雇用保険に加入している人(または過去に加入していた人)が利用できる制度で、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです。再就職や転職、リスキリングへの支援をさらに強化するため、2024年10月から給付率の上限が引き上げられています。
さらに、2025年4月からは、基本手当(失業給付)の給付制限も緩和されます。これにより、自己都合で離職した際の待機期間が短縮される予定です。
【教育訓練やリスキリング支援の充実の内容】
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
教育訓練給付制度には『一般教育訓練給付金』『専門実践教育訓練給付金』『特定一般教育訓練給付金』の3つがあります。それぞれの違いと、対象資格・講座の例は以下のとおりです。
一般教育訓練給付金 雇用の安定・就職の促進を支援 |
|
専門実践教育訓練給付金 中長期的なキャリア形成を支援 |
|
特定一般教育訓練給付金 速やかな再就職と早期のキャリア形成を支援 |
|
このうち専門実践教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金について、給付率の上限が引き上げられることになりました。
専門実践教育訓練給付金については、教育訓練の受講後に賃金が上昇した場合、現行の追加給付に加えて、受講費用の10%を追加支給(合計80%)。
特定一般教育訓練給付金については、資格取得後に就職などをした場合、受講費用の10%を追加支給(合計50%)されます。
特定一般教育訓練 | 専門実践教育訓練 | |
---|---|---|
最大給付率 | 教育訓練諸経費の 40%⇒50%※ ※資格取得・就職した場合に10%追加 |
教育訓練諸経費の 70%⇒80%※ ※教育訓練終了後の賃金が受講開始前より5%上昇した場合に10%追加 |
年間上限金額 | 25万円 | 64万円 |
失業した際は、失業給付(基本手当)を受け取ることができます。なお、自己都合による離職の場合は、待期満了日の翌日から原則2ヵ月間の給付制限がありました。しかし、今回の改正では給付制限が見直され、2ヵ月から1ヵ月に短縮。また離職期間中や離職日前1年以内にご自身で教育訓練を受けた場合は、給付制限が解除されます。
仕事を辞めて教育訓練を受ける場合、これまでは訓練期間中の生活費を支援するしくみがありませんでした。しかし今回の改正で「教育訓練休暇給付金」が創設。教育訓練を受けるために休暇を取得した場合、基本手当に相当する給付として、賃金の一定割合が支給されることになりました。
対象者 | 雇用保険被保険者 |
支給要件 |
|
給付内容 |
|
国庫負担 | 給付に要する費用の4分の1または40分の1(基本手当と同じ) |
今回の改正で、自己都合退職であっても迅速に基本手当(失業給付)を受け取りやすくなります。失業中のお金のことが心配で退職を踏みとどまっていた人にとっては、吉報となるでしょう。その意味では、改正後には自己都合による退職者が増える可能性があります。
しかし、改正後のルールには「5年間で3回以上の自己都合離職の場合には給付制限期間を3ヵ月とする」という規定も盛り込まれています。また、基本手当(失業給付)を受け取るには「離職前2年間に雇用保険に加入していた期間が12ヵ月以上必要(原則)」という条件も満たす必要があります。
以前よりも気軽に転職しやすい状況になるとはいえ、頻繁に自己都合退職を繰り返す人には厳しいルールになっていると言えます。
育児休暇を取得する方が増えたことにともない、育児休業給付の支給額は年々増加しています。さらに、今後は男性の育休休業取得が増加することで、支給額が一層増える見込みです。そのため、財政を安定させる目的で、国の負担割合や保険料率の見直しが決定しました。
また2025年には「出生後休業支援給付」や「育児時短就業給付」が新たに創設されます。これにより国は、とくに男性の育児休業取得をさらに後押しする方針です。
育児休業の給付額に対する国の負担割合は、本来「8分の1」とされています。しかし現在は、暫定的に「80分の1」に引き下げられています。今回の改正により、この暫定措置が廃止され、国の負担割合が本来の「8分の1」に引き上げられます。
雇用保険の保険料は、毎月の賃金に雇用保険料率を掛けて算出されます。今回の改正では、雇用保険料のうち育児休業給付の財源となる部分の保険料率が、現在の「0.4%」から「0.5%」へ引き上げられることが決定しました。ただし、当面は「0.4%」のまま据え置かれる予定です。これは将来の保険財政が悪化した際に、料率を柔軟に調整できるしくみを整えるための措置です。
雇用保険制度をこんなにも大きく改正する理由について、国は「多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築と『人への投資』の強化」としています。そこに注力する背景には、日本が抱える少子化や人手不足といった喫緊の課題があります。
子どもを増やすためには、育児休業など子育てしやすい環境を整えることが大切だと考えられています。また、働いてくれる人を増やして人手不足を解消したいという思惑もあるでしょう。
実際、こども家庭庁では「共働き・共育ての推進」を目的に各種制度を整えています。今回の雇用保険の改正も同様の趣旨があると推察されます。
国は、育児休業給付の財政安定化と同時に、男女ともに安心して仕事・育児に携われるよう「共働き・共育て」を推進しています。2024年6月には「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」が成立。新たに「出生後休業支援給付」「育児時短就業給付」が創設され、2025年4月からスタートします。
出生後休業支援給付とは、育児休業給付金にプラスして受け取ることができる給付金です。これまでは、休業開始から通算180日までは、手取りの8割相当の育児休業給付金が支給されていました。しかし出生後休業支援給付が追加されることで、一定期間手取りの10割相当の額を受け取ることができるようになります。
現在 | 2025年4月〜 |
---|---|
育児休業給付金 育児休業開始から通算180日までは賃金の67%(手取りの80%相当)、180日経過後は50%支給 |
育児休業給付+出生後休業支援給付金 最大28日間、育児休業給付に「休業開始時賃金の13%相当額」を上乗せ(手取りの100%相当) |
出生後休業支援給付を受けるには、以下の要件をどちらも満たす必要があります。
【出生後休業支援給付を受ける要件】
育児時短就業給付とは、2歳未満の子どもを育てる方に対し、時短勤務中の賃金額の10%を支給する制度です。現在は、育児のために時短勤務をして収入が下がっても、それをカバーするための給付制度がありません。しかし、育児時短就業給付が支給されることで、より時短勤務制度が利用しやすくなるでしょう。
2024年から2028年にかけて、雇用保険はさまざまな改正がおこなわれます。
たとえば、労働時間が短く今まで対象外だった人が新たに雇用保険に加入できるようになったり、スキルアップの費用補助が手厚くなったりします。また、基本手当(失業給付)を自己都合退職の場合でも早期に受け取ることができるようになるなどの変更が予定されています。
さらに、「出生後休業支援給付」や「育児時短就業給付」など、子育てする新しい支援制度も創設される予定です。
これらの改正により、多くの人が働きやすく、また働きながら子どもを産み育てやすい環境づくりが進められています。労働者にとってはメリットがある一方で、新たに雇用保険料を納める義務が発生する場合や、スキルアップや転職をする人としない人の間で格差が広がる可能性が指摘されています。
社会の動向や環境の変化を注視しながら、今後のご自身のキャリアについて一度じっくりと考える機会を持ってみてはいかがでしょうか。
ばばえりFP事務所代表。関西学院大学商学部を卒業後、銀行の窓口業務に従事。その後、保険代理店や不動産業界などでも経験を積み、独立。自身が過去に金銭的に苦労したことから、難しいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えするべく活動中。お金にまつわる解説記事の執筆や監修を数多く手掛けている。保有資格はAFP(日本FP協会認定)、証券外務員1種など。
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