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帰宅困難者になったら?対策や受け入れ施設など、とるべき行動を解説!

帰宅困難者になったら?対策や受け入れ施設など、とるべき行動を解説!

公開日:2025年2月6日

地震などの自然災害は予想するのが難しく、誰もが被災する可能性があります。とくに複数のプレート上に位置する島国の日本は、世界でも有数の地震大国とされており、普段からの備えが不可欠です。

職場や学校にいるときなど、自宅から離れた場所で災害に遭うことも考えられ、外出先から家に戻れない帰宅困難者になるケースもあります。

帰宅困難時には、自宅や家族などの様子を把握できないことも多く、大きな不安を感じるかもしれませんが、まず落ち着いてご自身を守ることが大切です。そこで今回は、帰宅困難者になったときの対策や受け入れ施設をはじめ、安全かつ適切に対処するためのポイントをわかりやすく解説します。

災害時の帰宅困難者とは?その背景を知っておこう!

山手線の運転見合わせの掲示板

地震をはじめとした災害は、在宅時に限らず、たとえば職場や学校、旅行先など外出時に遭遇する可能性もあります。自宅にいない場合に災害が起きたとき、想定しておきたいのが帰宅困難者となるケースです。ではまず、帰宅困難者の定義や注目を集めやすくなった背景などからみていきましょう。

・帰宅困難者とは?

「帰宅困難者」とは、「自宅から離れた外出先で地震などの災害に遭い、移動方法がなく家まで帰ることが難しくなった人」を指します。たとえば、通勤に使っている電車やバスが長時間動かないなど、おもに遠方から自宅に戻る手段をとれないケースが該当します。

ちなみに政府では、首都圏における直下型地震発生時の被害をモデルケースとして、帰宅困難者を以下のように定義しています。

【帰宅困難者の定義】

【出典】「帰宅困難者に係る用語の定義について」(内閣府・防災担当)をもとに作成

公共交通機関などを使用しなくても、一般的に歩いて帰宅できると見られるケースでは、徒歩帰宅者(近距離徒歩帰宅者)と呼ばれます。基本的に徒歩帰宅者は、帰宅可能者に当たります。

なお、「帰宅距離が10km超、20km未満」の場合については明確な定義はされていませんが、10kmを基準として、そこから帰宅距離が1km延びるごとに、帰宅困難な人は10%増えるとされています。仮に自宅から外出先まで12km離れた人たちで考えるなら、そのうち80%は帰宅可能者で、20%は帰宅困難者になると想定されています。

また帰宅可能者と帰宅困難者は、状況ごとに以下のような分類もできます。

帰宅可能者と帰宅困難者の状況

  種類 状況
帰宅可能者 近距離徒歩帰宅者 外出先から自宅までの距離が近く、徒歩で帰宅できる人
帰宅困難者 帰宅断念者 外出先から自宅まで遠いなど、移動手段をとるのが難しく帰宅できない人(近距離の徒歩帰宅者を除く)
遠距離徒歩帰宅者 外出先から自宅までは遠方にはなるものの、徒歩で帰宅できる人

・帰宅困難者の背景

2011年3月11日に東日本大震災が起きた際、首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県南部)では、約515万人もの帰宅困難者が発生しました。

こうした多くの帰宅困難者による急激な大混雑から、現場では集団転倒・火災や余震などの二次被害の拡大・救助活動の滞留といった、さまざまな危険性が問題に。数多くの帰宅困難者が殺到して動き出すことから、駅周辺などの都市機能が混乱するリスクが大きく問題視されるようになりました。

政府によるアンケート調査では、東日本大震災時の帰宅方法として約37%が「徒歩」と回答し、もっとも高い割合を占めています。次いで約21.8%が「自分で運転する車」、約12.3%が「鉄道・地下鉄」、約11%が「自転車」との結果が出ています。

ちなみに通常時の帰宅方法では、「徒歩」が約14.4%、「鉄道・地下鉄」が約43.3%となっています。東日本大震災では、多くの電車利用者が徒歩に切り替えて帰宅した様子が推測されます※1。なお「自分で運転する車」と「自転車」は震災時と通常時の比率に大きく変わりはありません。

東日本大震災時の帰宅手段
東日本大震災時の帰宅手段 東日本大震災時の帰宅手段

【対象者】東京都(島しょ部除く)、神奈川県、千葉県、埼玉県および茨城県南部に居住し、3月11日の地震発生時に自宅外にいた10代~60代の男女(5,372人)

【出典】「帰宅困難者対策の実態調査結果について~3月11日の対応とその後の取組~」(内閣府・防災担当/首都直下地震帰宅困難者等対策協議会事務局)をもとに作成

災害時には帰宅困難者の混雑による事故などが懸念されると同時に、公共交通機関がうまく機能しなくなることから、移動手段が閉ざされる可能性が高いとみられています。

いつどこで災害が起こるのか予想できないうえに、ご自身が帰宅困難者になって対処に困ってしまうケースもないとはいいきれません。いざというときに慌てないためにも、一人ひとりが防災意識を持つことが大切です。また内閣府より、帰宅困難者対策のガイドラインも出ているので、もしもの備えとしてチェックしておくことをおすすめします※2

※2 出典:「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン 令和6年7月」(内閣府・防災担当)

栗栖防災士 栗栖防災士

栗栖防災士からのアドバイス!

東京で災害が起こった場合、とるべき行動は?

まず、むやみに移動を開始せず、安全な場所にとどまることが基本です。自分の安全を確保し、正確な情報の把握に努めましょう。地震は突然起きるため誰もが慌ててしまい、なかにはパニックに陥る方もいるでしょう。これは仕方のないことですが、SNSのデマ情報を信じこまないことが重要です。

災害が起きれば東京都に「災害対策本部」が設置されます。マニュアルだけでなく臨機応変な対応がなされるため、不安にならなくても大丈夫です。

なお、駅周辺は混雑するため近づかないようにしてください。職場や学校、一時滞在施設など安全な場所にしばらくとどまることをおすすめします。また、普段から防災アプリをスマホに入れておけば、現在地に一番近い避難所を検索できるため便利です。とにかく、人の流れにのって移動するのでなく、正確な情報を得たうえで次の行動をとることが重要です。

外出時に災害が発生した場合の対策や備える方法は?

もし外出中に災害が起きて帰宅困難者になってしまったら、慌てて無理に動き出そうとせず、落ち着いて適切に対処していくことが重要です。ではここから、外出中の災害に向けて、できるだけ安全を確保するための対策や備えについて解説していきます。

・むやみに移動せず、一斉帰宅を抑制しよう!

災害が発生して数多くの帰宅困難者が出た場合、たくさんの人々が一斉に帰ろうと無理に動き出してしまうと、次のような危険が生じる可能性があります。

一斉帰宅した場合の危険性

駅周辺が大混雑する

駅周辺が大混雑する

災害発生地域周辺や電車が止まった駅周辺で大混雑が起き、満員電車並みの密集に長時間巻き込まれてしまう。

救助車両の現場到着が遅れる

救助車両の現場到着が遅れる

路上での大混雑・大渋滞により、警察・消防・自衛隊の救助車両の現場到着が遅れ、救命活動が滞ってしまう。

落下物での二次被害が起きる

落下物での二次被害が起きる

帰宅中に余震が起き、火災や沿道、建物からの落下物での死傷などの二次被害に遭うことがある。

過密空間での群衆雪崩が起きる

過密空間での群衆雪崩が起きる

大混雑による集団転倒や、狭い道や橋などの過密空間で連鎖して倒れたり群衆雪崩が起きて圧死したりすることも。

また災害発生時には、「72時間の壁」と呼ばれる、とくに生存率の高い人命救助のタイムリミットがあるとされています。救助・救命活動の大きな一線となる被災直後の72時間は、救助隊の妨げにならないためにも、一斉帰宅は避けて安全な場所に留まることが大切です。

いずれも焦って不注意に動き出そうとして発生してしまうもので、むやみに移動したり、帰宅を開始したりしないことが重要です。実際に東京都をはじめとした各自治体では、災害時における一斉帰宅抑制の条例や基本方針などを掲げ、市民への啓発や対策に取り組んでいます。

・時間帯別行動パターンのルール化を図ろう!

外出中といっても、災害が起きたタイミングによって、とるべき行動は変わってきます。帰宅困難者になるパターンとして想定できるのは、大きく分けて外出先に向かうとき・外出先に滞在しているとき・外出先から帰るときの3つ。ではそれぞれで、どのような対処方法が考えられるのかみていきましょう。

災害発生時間帯別・行動パターンの基本ルール
災害発生時間帯別・行動パターンの基本ルール災害発生時間帯別・行動パターンの基本ルール

まず、外出先に向かうときには、家を出た直後で付近にいる場合には、戻って自宅待機するようにしましょう。ただし、通勤・通学などの道中で、行き先が近ければ当該施設で待機し、自宅にも行き先にも移動できなければ安全な場所に一時避難・待機するのがよいでしょう。

また、外出先に滞在しているときには、就業中や授業中などの場合、オフィスや施設内で待機するようにしましょう。何らかの用事で出先にいる場合には、安全な場所に一時避難・待機します。

なお、外出先から帰るときに地震が起きたときには、通勤・通学先となるオフィスや施設内で待機するか、オフィスや施設が近ければ戻って待機しましょう。ただし、帰宅の道中で、すでに家が近いときには自宅へ移動して待機し、自宅にも行き先にも移動できなければ安全な場所に一時避難・待機するのが望ましいでしょう。

・災害時の安否確認方法や情報収集

家族や職場・学校の仲間などの身近な人がいない状態で、外出中に災害が起きて帰宅困難者になった場合に、すぐにでも対処しておきたいのが安否確認です。

ただし東日本大震災でも大幅な回線混雑が発生したように、災害時には被災地における電話が非常に集中しやすい傾向にあります。すみやかにご自身と周りの状況を把握して、なるべく安全を確保できるようにするには安否確認が欠かせませんが、災害時にはなかなか電話がつながらないこともあります。こうした緊急事態でもすぐに対応できるように、災害時の連絡手段も覚えておくようにしましょう。

また災害時の連絡手段は、あらかじめ家族間や職場・学校内で決めておくことも重要です。どのような手段で安否確認をするのかわからないと、お互いに連絡を取り合うのが難しくなってしまいます。なお災害時の安否確認方法として、回線混雑を避けながら連絡を取れる手段としては、次のような例があります。

災害時のおもな連絡手段
災害伝言ダイヤル171

災害伝言ダイヤル171

声の災害用伝言板。固定電話や携帯電話で「171」にかけてご自身の安否などの伝言が録音できます。また、録音された伝言を確認することができます。

災害用伝言版(Web171)

災害用伝言版(Web171)

インターネットの災害用伝言板。ご自身の安否などの伝言を100文字以内で登録すると家族などが閲覧できます。
web171を利用する

携帯各社の災害用伝言版

携帯各社の災害用伝言版

ご自身の安否などの伝言を携帯各社の伝言版に登録できます。登録された安否情報は家族などがインターネットを通じて確認することができます。

アプリやメール

アプリやメール

電話が使用できない状況でも、インターネットは比較的使える環境が整いやすいため、日頃から家族グループなどを作っておきましょう。

災害Wi-Fi 00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)

災害Wi-Fi 00000JAPAN

災害時に携帯電話大手各社が垣根を超えて無料開放する、公衆無線LANサービス。利用時間や回数の制限などはありません。

公衆電話

公衆電話

公衆電話は災害時に通信規制を受けず優先的に扱われるため、携帯電話を含めた一般電話よりつながりやすくなっています。

ちなみに災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板(web171)は、電話番号を使って簡単にメッセージを残せる伝言サービスで、迅速かつ確実な安否確認として有効です。

災害用伝言ダイヤル(171)でメッセージを残すには

災害用伝言ダイヤル(171)でメッセージを残す場合には、まず固定電話・携帯電話・公衆電話などで「171」にダイヤルし、音声ガイダンスにしたがって録音「1」をプッシュ。安否を伝えたい相手の電話番号を打ち込んで、伝言を録音します。

録音を再生する際も同じく「171」にダイヤルし、音声ガイダンスによる再生「2」をプッシュ。安否確認をしたい相手の電話番号を打ち込むと、伝言が残されている場合には、そのメッセージを聞くことができます。

災害用伝言ダイヤル「171」の利用イメージ

災害用伝言ダイヤル「171」の利用イメージ

災害用伝言板(web171)でメッセージを残すには

また災害用伝言板(web171)でも同様に、携帯番号などをもとに、テキストメッセージを残せます。インターネットから災害用伝言板にアクセスし、所定の入力欄にご自身の電話番号を打ち込んで登録すると、簡単な伝言メモの書き込みが可能。反対に伝言メモがあるか確認したいときには、災害用伝言板の所定入力欄に相手の電話番号を入れて検索をすると、書き込みがあれば内容を確認できます。

なお災害時には、無料の公衆Wi-Fi(災害用統一SSID「00000JAPAN」)も開放しています。こちらの無料公衆Wi-Fiを使えば、問題なくインターネット回線の接続ができ、災害用伝言版などのウェブサービスも利用できます。

さらに帰宅困難者になった際に注意したいのは、SNSなどで拡散されるデマ情報です。より正しい情報収集ができないと安全確保は難しいので、きちんと信用できる発信元を見極めることも大切。次のような方法で、正確な情報を集めるようにしましょう。

【正しい情報を集めるためには】

・「災害時帰宅支援ステーション」とは?

公共交通機関が回復しないため、帰宅困難者となり徒歩で移動することになった場合には、「災害時帰宅支援ステーション」と呼ばれる各拠点を利用して、さまざまなサービスを受けることが可能です。

「災害時帰宅支援ステーション」とは、帰宅困難者に向けた各種サポートに対応している、公共施設やコンビニエンスストア・ファミリーレストラン・ガソリンスタンドなどの店舗を指します。「災害時帰宅支援ステーション」となっている施設には、黄色のステッカーが貼られており、該当拠点とわかるように入口の目立つ場所に表示されています。

なお「災害時帰宅支援ステーション」では、おもに水道水の支給・トイレや休憩スペースの提供・交通関連の情報伝達といったサービスを提供します。帰宅困難時には、こうした「災害時帰宅支援ステーション」も活用して、身の安全を守ることも大切です。

帰宅困難者の受け入れ施設とは?一時滞在施設などの支援制度を紹介!

ペットボトルや食料の備蓄

通勤や通学などの移動中で帰宅困難者となった場合、どうしても自宅まで帰る手段がとれないときには、一時的にその現場に滞在しなければならないケースも想定されます。そうした際に利用できるのが、各自治体による受け入れ施設です。それぞれの市区町村では、帰宅困難者の受け入れに対応する、さまざまな対策に取り組んでいます。そのひとつとなるのが、一時滞在施設の設置・運営・開設などによる、災害時の安全な待機場所の確保です。

一時滞在施設では、基本的に帰宅できる状況になるまでの待機・休憩スペースを提供。地域や施設ごとに詳細な内容は異なりますが、トイレなどの衛生関連をはじめ、水・食料・毛布・ブランケットの支給や情報提供を実施するのが一般的です。また滞在期間も、自治体によって違いはありますが、災害発生時より1日~3日間程度を目安に利用できます。

・受け入れ施設はどうやって探せばいいの?

先ほどご紹介した、帰宅困難者の受け入れをしている一時滞在施設の探し方は、自治体によって異なります。なお一時滞在施設の検索方法として、代表的なのは以下のとおりです。

【一時滞在施設を探す方法】

神戸市では、2024年4月より、ウェブサイトにて「帰宅困難者支援システム」のウェブサービスを開始。災害時に街中で掲示される二次元コードを読み取るだけで、事前登録なく、すぐに利用できるシステムになっています。さらに一時滞在施設の検索だけでなく、予約機能(チェックイン・チェックアウト)も搭載。よりスムーズな一時滞在施設の利用を促しています。

栗栖防災士 栗栖防災士

栗栖防災士からのアドバイス!

一時滞在施設って実際どうなの?利用する際に気を付けることは?

一時滞在施設が開設される理由は、災害が発生した後に命のデッドラインとなる72時間以内に、迅速な救助活動によりひとりでも多くの命を救うためです。

東京都では、集会場・庁舎やオフィスビルのエントランスホール・ホテルの宴会場・寺社などが対象です。発災から72時間(最大3日間)程度まで利用でき、原則として食料・水・毛布又はブランケット・トイレ・休憩場所・情報などを提供します。

ただし、施設は必ず開設されるわけではありません。施設が開設されても被災状況や受入状況によっては、利用できないこともあるため注意しておきましょう。そのため気を付けることは、正しい開設情報を得ることです。

大地震が発生した際には、受入可能となった一時滞在施設の情報が、東京都や各区市町村、駅前滞留者対策協議会等から速やかに発信されます。正しい情報を確認し、開設された近くの施設に移動しましょう。

帰宅難民にならないためには、事前の備えが大切

非常用持出袋の中身

いわゆる帰宅難民とも呼ばれる、帰宅困難者となり困らないためには、十分な防災対策が欠かせません。そこでここからは、万が一のために準備しておきたい対応策や、緊急事態に役立つ便利な持ち歩き可能な携帯グッズなどをご紹介していきます。

・災害が起きる前に、事前に準備しておこう!

いざというときの備えになるのが、災害時に向けたルールや防災知識を頭に入れておくことです。もしものために、最低限はおさえておきたい基本的なポイントとしては、次のようなものが挙げられます。

【災害時におさえておきたいポイント】

上記はあくまで一例で、たとえば「職場・学校の近くに住む人と協力できるようにする」「ご近所などの知り合いと防災時の対応を考えておく」など、さまざまな準備をしておくのがベストです。緊急事態でも、落ち着いて対処できるような心がまえをしておきましょう。

また、調べた結果を常に記憶しておくことは難しいため、スマホのメモアプリなどに保存しておくと、いざというときに役立ちます。

・持ち歩き用に便利な防災グッズとは?

いつでも帰宅困難者になる可能性はあるため、通勤・通学などの外出時には、簡単に持ち歩きができる防災グッズを携帯しておくのがおすすめです。

外出時に携帯したい防災グッズ

【防災グッズ】いつも携帯するもの(0次品)

出典:「防災情報のページ」(内閣府・防災情報)をもとに作成

たとえば、モバイルバッテリーや懐中電灯をはじめ、衛生用品・停電対策用品・危険時のSOS発信グッズなどがあります。携帯食料は小分けになったお菓子にしておくと、少しずつ食べることができるためおすすめです。また小分けのお菓子であれば、こまめなカロリー摂取が可能。また寒い季節には、小さく畳める保温シートやブランケットを用意しておくと、屋外での休憩もしやすくなります。

さらに雨具としてレインコートがあると、雨除けにも冬場の防寒にも使えて一石二鳥です。こうした防災グッズは、まとめてポーチなどに入れておくと、カバンを入れ換えるときにも便利でしょう。

また、ここまでにご紹介したような各種アイテムをまとめて購入できる、帰宅困難時に向けた常備携帯用セットや、救援キットなども市販されています。各種アイテムをひとつずつ準備するのが大変に感じる場合には、こうした一式そろった防災グッズを購入するのもいい方法です。

コンパクトに持ち運べる「災害ボトル」の例

コンパクトに持ち運べる「災害ボトル」の例

出典:警視庁警備部災害対策課の情報をもとに作成

・職場用でもマイ防災セットを用意しておこう!

もしも職場で勤務中に災害が起きてしまったら、無理に帰宅せず、そのままオフィスなどで待機するのが基本です。こうした就業中の災害にも対応できるように、職場にも防災グッズを常備しておくとベストでしょう。

よくある例としては、飲料水(1日3リットル程度)・非常食(1日3食が目安)・毛布やブランケットといった防寒具・停電対策用品(携帯ラジオ・懐中電灯・乾電池)など。また何日か滞在することを想定して、衛生用品(簡易トイレ・トイレットペーパー・生理用品など)や、救急医薬品・常備薬なども用意しておくとよいでしょう。

なお徒歩帰宅に備えて、路上を移動しやすい靴の準備をしておくのもおすすめです。とくに大規模な災害時には、建物などから崩れたがれきやガラスの破片といった危険物が、路上に散らばって危険な場合があります。革靴やパンプスでは歩きづらく、避難する際の安全性にも欠けるので、底が厚くて歩きやすいスニーカーなどを置いておくと便利です。

栗栖防災士 栗栖防災士

栗栖防災士からのアドバイス!

これだけは準備しておきたい、帰宅困難者向けの防災グッズとは?

帰宅困難者向けの防災グッズは、コンパクトさと実用性を兼ね備えたものが理想的です。まず、必須なのは、携帯用の小型ライトとFMラジオです。これらは情報収集と暗闇での移動に不可欠です。

次に、飲料水と非常食を用意しましょう。500mlのペットボトル数本と缶詰やエネルギーバーなどがおすすめです。長期保存可能な水ではない一般的なミネラルウォーターでも1~2年は保存できます。また、簡易トイレも重要で、とくに長時間の移動や待機時に役立ちます。

そのほか、モバイルバッテリー・使い捨てカイロ・レインコート・マスク・救急セットなども有効で、ほとんどが100円ショップで手に入ります。これらをコンパクトなバッグにまとめて、職場や通学先に保管しておくと安心です。

最後に、歩きやすい靴(スニーカーなど)を用意しておくことも欠かせません。とくに、パンプスなどのヒールが付いた靴は、帰宅する際に不向きです。長距離歩行に備え、足の安全を確保しましょう。

まとめ

・自宅へ帰るか否かの判断が最も重要。事前に対処法の検討を(防災士・栗栖さん)

バスや電車など公共交通機関を使って通勤・通学している方は、施設へ向かう途中や滞在中、帰宅途中に災害が起きると、帰宅が困難になってしまいます。どのような対処をすべきか事前に把握しておけば、ご自身を守ることができるでしょう。そして、災害時にもっとも重要なことは、その場所から自宅へ帰るか否かの判断です。地震による災害時には、公共交通機関が利用できないケースがほとんどです。

徒歩での帰宅を検討する際には、道路の寸断や建物の倒壊、火災の発生などにより想定した道路が利用できないケースも少なくありません。したがって、むやみな行動は避け、会社や学校、自治体が用意する一時滞在施設や避難所などの利用が賢明です。もし、帰宅途中に災害が発生した場合は、災害時帰宅支援ステーションが利用できることを知っておきましょう。トイレや水道水の提供があり、休憩にも利用できます。

東京都は令和4年、10年ぶりに見直しをおこない、首都直下地震等による被害想定を公表しました※3。この被害想定によると、震源が都心南部となる被害がもっとも多く、帰宅困難者は約453万人とされています。しかしこの数値は、10年前の約517万人から64万人も減っています。これは、都民の正しい防災知識により、10年間で防災・減災対策が普及した成果といえるでしょう。

記事内では帰宅困難者になった際に必要な知識や、正しい行動について詳しく解説してあります。災害時にご自身の身の安全を確保するためにも、しっかり熟読しておきましょう。

※3 出典:「首都直下地震の被害想定 対策のポイント」(内閣府・中央防災会議 首都直下地震対策検討ワーキンググループ)

・お金の備えは地震保険や地震の「特約の有無」のチェックから(FP・馬場先生)

地震はいつどこで起きるか分からない大きなリスクです。出先で大地震に遭遇してもパニックにならず適切に行動するためには、正しい知識を持ってあらかじめ対策しておくことが重要でしょう。ただ、地震は心身の健康だけでなく大切な財産を奪ってしまうこともあります。

たとえば家が倒壊するなどした場合、被害額は相当なものになるでしょう。生活再建にもお金がかかります。職業によってはしばらく働けず、収入が減る(もしくはなくなる)かもしれません。とくに首都直下地震のように大きな被害が出る地震が起きた際には、支援の手が回ってくるまでに時間がかかる可能性もあります。

命を守る防災対策を最優先にしつつ、あわせて、財産を守るための備えについても考えておきましょう。いざというときにすぐ使える預貯金を用意しておくのもひとつですが、地震のような大きな経済的リスクが想定されるものに関しては保険で備えるのも有効です。

今加入している火災保険や自動車保険は、地震の際に保険金が受け取ることができるものでしょうか?お金の面での備えは、まずは地震保険や地震に関する特約の有無を確認するところから始めてみるのがおすすめです。

監修者情報

栗栖 成之(くりす しげゆき)

防災士 
栗栖 成之(くりす しげゆき)

防災士/ひょうご防災リーダー/ひょうご防災特別推進員/姫路市防災リーダー会員。長年、自治体のハザードマップ作成業務に携わり、洪水・土砂災害・地震・津波・高潮など、あらゆるハザードマップを作成。2014年よりWebライターとしても活動をはじめ、Yahoo!ニュースエキスパートをはじめ、多数のメディアで防災にまつわる情報を発信している。

馬場 愛梨(ばば えり)

ファイナンシャルプランナー 
馬場 愛梨(ばば えり)

ばばえりFP事務所代表。関西学院大学商学部を卒業後、銀行の窓口業務に従事。その後、保険代理店や不動産業界などでも経験を積み、独立。自身が過去に金銭的に苦労したことから、難しいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えするべく活動中。お金にまつわる解説記事の執筆や監修を数多く手掛けている。保有資格はAFP(日本FP協会認定)、証券外務員1種など。

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