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公開日:2023年9月1日
2022年12月、東京都における新築物件について、太陽光発電設備の設置義務化を進める条例改正がおこなわれることが正式に決まりました。この太陽光発電設備の設置義務化制度は、2025年4月から本格的に適用されます。対象になっているのは一般住宅であるため、東京でマイホームを建てたり買ったりする方にとっては、「自分たちで太陽光パネルを準備して取り付ける必要があるの?」など、何かと気になることでしょう。
さらに東京都以外にも、各地で再生可能エネルギー設備の設置義務化が実施されており、今後はさらに拡大していく可能性もあります。東京都と同じように全国的に一般住宅で太陽光パネルの設置義務化が実施されていけば、ほかの地域にお住まいの方々も他人事ではありません。そこで今回は、太陽光パネルの導入によるメリット・デメリットや、設置費用に使える補助金などをご紹介。また太陽光発電設備の設置義務化が広がり始めた経緯や、全国的な動向についてもあわせて解説していきます。
前述のとおり2025年4月から始まる東京都の太陽光パネルの設置義務化は、新築の一般的な住宅を対象とした内容になっており、今後の住まい選びにも関係してくる制度です。では具体的にどのような規定があるのか、次から詳しく解説します。
東京都では2030年までの温室効果ガス半減を目指し、延床面積2,000㎡未満の中小規模の新築で、太陽光パネルの導入を義務化することが決まりました。
2025年4月から新たに建てられる住宅などが対象で、増改築や既存の建物については該当しません。さらに設置義務が求められるのは、ハウスメーカーをはじめとした、建築をおこなう事業者です。年間の東京都内での供給延床面積の合計が2万㎡以上の建物を手がける大手企業の約50社を対象に、新築建築物への設置が義務付けられています。一般的に建売住宅といわれる戸建や注文住宅、共同住宅などに、太陽光パネルが導入されるようなイメージです。
実際に住まいを選ぶ消費者は、事業者より設置されている太陽光パネルなどの説明を受けて、購入を検討することになります。なお注文住宅でも、あらかじめ再生可能エネルギー設備に関する説明がされてから、成約を決める流れになっています。もちろん消費者側としては、仮に建売住宅であれば、太陽光パネルの説明を受けて検討したのち、その物件を購入しなくても問題ありません。注文住宅でも、設置義務のないハウスメーカーで建てるなどといった選択肢はあります。
ただし、太陽光パネルはすべての新築住宅で導入しなければいけないというわけではなく、太陽光パネルの設置が難しい条件などの場合は、導入対象外とされるケースもあります。たとえば、屋根や建物自体の面積が小さすぎる、日照条件が悪いなど、建物の形状や立地次第では、設置されないこともあります。
東京都では、2023年度における太陽光パネルの補助金制度として、「災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」を開始しています。これは新築および既存住宅の双方において、補助金を受け取ることができます。
また一般住宅における太陽光発電設備の設置義務化を進める東京都では、住まいの環境性能向上に関するさまざまな制度を設けています。そのうち太陽光パネルに関連して、一般消費者向けの補助金が出る支援制度に、「東京ゼロエミ住宅」という取り組みがあります。
「東京ゼロエミ住宅」とは、太陽光発電設備を含め、電力消費効率や断熱性といった省エネに優れた新築住宅を東京都が認証する制度です。各種条件を満たして「東京ゼロエミ住宅」に認証された場合には、建築主は都からの助成金を受けられます。
「災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」および「東京ゼロエミ住宅」はいずれも、新築住宅に太陽光パネルの設置にあたって1kwあたり12万円が補助(上限36万円)されます。なお、3.6kw超えの太陽光パネルの場合1kwあたり10万円の補助金額となります。詳細は以下の東京都環境局ホームページをご覧ください。
(参考)東京都環境局「太陽光発電設備の設置に対する東京都の助成事業」
なお、東京都環境局のウェブページに掲載されている「太陽光ポータル~太陽光発電のメリット~」によれば、新築住宅に太陽光パネルを設置する場合には、以下のようなモデルケースでプラスアルファとなる想定がされています。
出典:東京都環境局「太陽光ポータル~太陽光発電のメリット~」をもとに作成
支出 |
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補てん |
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利益 |
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また東京都の支援制度以外にも、都内の各自治体で独自に実施している支援制度もあり、太陽光パネルの新規設置に活用することが可能です。詳しくは以下のページより確認してみてください。
(参考)東京都環境局 支援策(補助金)
太陽光発電設備の設置義務化は、東京都以外の地域でも全国的に広まっている取り組みです。ではなぜ、日本全体で太陽光パネルの普及がすすめられているのか、その背景から解説します。
現在、再生可能エネルギー設備の設置義務化がおこなわれているのは、京都府と京都市、群馬県(2023年5月時点)。東京都では2022年12月に、新築住宅への太陽光パネルの設置義務化が決まり、2025年4月から実施されます。さらに川崎市でも2023年3月に、太陽光パネル設置義務化に関する新たな法案が可決され、2025年4月より施行される見込みです。
温室効果ガスなどの影響から、世界規模で気象が変動していると見られており、自然災害のリスクも高まっているとされている昨今。日本政府は2020年10月にカーボンニュートラルの宣言をし、CO2などの排出量削減・吸収強化により、2050年までに温室効果ガスの実質ゼロを目指す方針を示しています。
こうした背景から国内の地方自治体においても、カーボンニュートラルへの取り組みとして、脱炭素社会に向けた施策を推進。そしてその一環となるのが、太陽光パネルの設置義務化です。太陽光のような自然の力を活用する、再生可能エネルギーを浸透させることで、地球温暖化対策と同時に各地域の資源確保を進める意味もあります。
では具体的に、各地域でどのような取り組みがされているのか、実際の義務化の内容についてご紹介します(2023年7月時点)。
東京都では、延床面積2,000㎡未満の一般的な住宅が義務化の対象になっています。一方で京都府と京都市は300㎡以上、群馬県は2,000㎡以上など、ほかの地域では基本的に大規模な建物が義務化の対象です。東京都のように、小さな住宅向けの太陽光発電設備の設置義務化をしたのは全国的には初めての取り組みとされています。ちなみに川崎市では、延床面積2,000㎡以上の建物と一般住宅向けの双方に対する義務化がおこなわれる見込みです。そのため川崎市の場合は、東京都とその他の地域における取り組みのどちらも兼ね備えた制度になっています。
対象範囲 | 施行日 | 設置規定 | |
---|---|---|---|
東京都 | 延床面積2,000㎡未満(都内供給延床面積2万㎡以上の事業者を対象に設置義務化) | 2025年4月 |
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京都府・京都市 | 延床面積300㎡以上 | 2022年4月1日 | 延床面積300㎡~2,000㎡未満:年間3万MJ※以上 延床面積2,000㎡以上:年間6万~45万MJ※(延床面積×30MJ※)以上 |
群馬県 | 延床面積2,000㎡以上 | 2023年4月1日 | 年間60MJ×延床面積以上 |
神奈川県(川崎市) | 延床面積2,000㎡以上 その他戸建住宅などの建築事業者 |
2025年度見込 | 詳細未定 |
東京都 | |
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対象範囲 | 延床面積2,000㎡未満(都内供給延床面積2万㎡以上の事業者を対象に設置義務化) |
施行日 | 2025年4月 |
設置規定 |
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京都府・京都市 | |
---|---|
対象範囲 | 延床面積300㎡以上 |
施行日 | 2022年4月1日 |
設置規定 | 延床面積300㎡~2,000㎡未満:年間3万MJ※以上 延床面積2,000㎡以上:年間6万~45万MJ※(延床面積×30MJ※)以上 |
群馬県 | |
---|---|
対象範囲 | 延床面積2,000㎡以上 |
施行日 | 2023年4月1日 |
設置規定 | 年間60MJ×延床面積以上 |
神奈川県(川崎市) | |
---|---|
対象範囲 | 延床面積2,000㎡以上 その他戸建住宅などの建築事業者 |
施行日 | 2025年度見込 |
設置規定 | 詳細未定 |
<京都府>
京都府では2015年より、太陽光発電などに関する「京都府再生可能エネルギーの導入等の促進に関する条例」を施行しています。もともとは延床面積2,000 ㎡以上の新築および増築を対象に、再生可能エネルギー(太陽光パネル含む)が使える設備の導入を義務化しました。なお2020年には改正がおこなわれ、延床面積300㎡~2,000㎡未満まで対象を拡大。さらに延床面積2,000 ㎡以上の建築には設置義務の条件が強化され、いずれも2022年4月より全面的に実施されています。
また設置する太陽光パネルの発電量に関しても、以下のような規定があります。
<京都市>
京都市では、もともとは2004年より「京都市地球温暖化対策条例」を定め、環境保護に向けたさまざまな取り組みが実施されてきました。その後は京都府と同じく、2020年より改正がおこなわれ、再生可能エネルギー設備の設置義務を強化。京都府と統一された基準により、一定規模以上の建築では、規定の条件を満たした太陽光パネルなどの設置が求められます。
<群馬県>
群馬県では2019年12月に「ぐんま5つのゼロ宣言」を発表し、2022年3月に本格的な実現を目指す条例を定めました。なお太陽光パネルなどの再生可能エネルギー設備は、2023年4月より、延床面積2,000㎡以上の新築や増築で設置義務を設けています。なお設置する設備は、年間で60MJ×延床面積以上の発電ができるものとしています。
<神奈川県(川崎市)>
川崎市では、2025年4月より「川崎市地球温暖化対策の推進に関する条例」を改正した制度を実施し、延床面積2,000㎡以上の新築や増築で再生可能エネルギー設備の設置を義務付けています。なお延床面積2,000㎡未満の場合は、年間に一定以上の建築をする事業者(ハウスメーカーなど)に対し、戸建住宅にも太陽光パネルの設置を義務化。2030年時点において、市全体の6割の新築戸建住宅で導入されるのを目標に、具体的な規定が設定される見込みです。
では実際に、一般消費者の日常生活で太陽光パネルを取り入れると、どのような影響があるのか以下で解説します。
太陽光パネル設置のメリットは、大きく分けて以下の4つが挙げられます。
太陽光パネルを導入することで、先ほども出てきた「東京ゼロエミ住宅」のように、マイホームの購入における補助金や助成金を受けられるケースがあります。
環境省によれば、一般家庭の平均年間電気消費量は4.175kWh。一般的な太陽光パネルの1kWごとの年間発電量は約1,000kWhといわれており、4kWの設備を使えば1年で約4,000kWhの発電効果が見込めるため、大半の消費電力をカバーできる計算になります。さらに消費しなかった分の電力は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)などによる売却も可能です。
また自然災害が増えている近年※1では、停電時のライフラインとして活用できるのもメリット。自立運転※2に対応した太陽光パネルを設置すれば、電気が通らなくなったときでも太陽光パネルの設備から直接電力が使うことができるため、スマートフォンや家電製品などが利用可能になります。
太陽光パネルは、新築住宅の屋根に設置した場合、建物の一部とみなされるため、火災保険の補償対象に含まれます。もし地震や台風などの被害で壊れてしまったとしても、実質的には損害が補える点も安心できるポイントです。なお火災保険では、補償の対象物(建物や建物に含む設備、家財)の評価額に応じて、保険金額も設定されます。前述にもあるように太陽光パネルは建物評価額に含まれるため、後付けした場合は、火災保険上の建物の資産価値が上がったと考えられるケースも。太陽光パネルを後付けする場合も火災保険の補償対象にはなりますが、契約内容の見直しが必要となる可能性もあるので、一度契約先の保険会社に確認してみることをおすすめします。
火災保険では、火災だけでなく落雷、台風、洪水など自然災害のリスクに備えることも可能です(地震のリスクに備えたい場合は、火災保険に地震保険を追加しておく必要があります)。
太陽光パネルにはメーカーの保証も付いていますが、自然災害による故障や破損が対象にならなかったり10年程度で終わってしまったりすることもあるので要確認です。太陽光パネルは、一般的には火災保険の補償対象になります。ただし、火災保険には「家財の補償」と「建物の補償」があります。太陽光パネルは建物の一部とみなされるので、建物の補償が付いていないと対象にならないので注意しましょう。
確実に補償を受けられるよう、火災保険を契約するときは、太陽光パネルがあることを特記事項欄に記載しておくのがおすすめです。契約後に太陽光パネルを設置した場合は、太陽光パネル分が保険金額(いざというときにもらえる金額)に含まれるよう契約を見直しましょう。
太陽光パネルの設置にあたって、注意しておきたいデメリットとしては以下の3つが挙げられます。
太陽光パネルの継続的な活用により、経済面でのメリットに期待できますが、導入するにはやはりまとまった初期費用(約100万円)がかかってしまう一面もあります。ただし東京都の太陽光パネル設置義務化にともなう新制度では、初期費用をまかなえる補助金もあり、できるだけコストを抑えることは可能です。もしくは太陽光パネルのリースサービスを活用することで、場合によってはまとまった初期費用をかけずに設置する方法もあります。
また前述にあるように、自然災害による破損は火災保険で対応できる可能性がありますが、その他の故障時には修理やメンテナンスの費用が発生することも。太陽光パネル本体は比較的長く維持できるとされていますが、その他の附属機器(パワーコンディショナーなど)の寿命が先に来てしまう場合もあります。そうすると、取り替えの費用がかかってしまう点もデメリットでしょう。
さらに投資したコストを回収するのに、何年かはかかってしまうため、どの程度で回収できるか明確には判断できません。東京都が発表したようなモデルケースはあるものの、たとえば電力の買取価格が下がるなど、想定外の事態が起きる可能性もあります。とはいえ太陽光パネルがあれば少なくとも自宅の電力はまかなえて、地震や停電といった自然災害や緊急事態など、いざというときの備えにもなります。
住宅価格が高騰している昨今。太陽光パネルの設置が義務化されれば、またさらに住宅価格が上がってしまうと懸念する声もあります。
太陽光パネルの設置義務を課されるのは、家を購入する人ではなくハウスメーカーなどの事業者です。しかし、太陽光パネルを設置すると100万円以上のコスト増になる場合もあるため、それは当然住宅価格に上乗せされることになるでしょう。
そのため、負担をおさえるには、太陽光パネル設置に関する補助金制度を活用しましょう。また、太陽光パネルを設置することでZEHなど一定の省エネ基準を満たす住宅と認められれば、住宅ローン控除の上限額が上がり、税金面のメリットも大きくなりますよ。
太陽光発電設備の設置義務化により、とくに東京都では、一般家庭でも太陽光パネルが導入しやすい仕組みが確立されました。太陽光パネルで自家発電をすれば、電気代の節約もできますし、その電力を売ることもできるのは大きなメリットでしょう。
また国として積極的に推進している制度でもあり、補助金や電力買取などの各種支援もしっかりとそろっています。どうしても導入にはコストがかかってしまいますが、太陽光パネルを設置しておけば停電などの緊急時にも備えられるため、災害が起きやすくなっている近年には重要な存在でしょう。また太陽光パネルの設置が義務化されたとはいえ、一般消費者として必要な設備なのかは個人で選ぶことができます。実際に義務化制度がはじまるのは2025年ですが、将来的に東京でマイホームを検討している場合には、今のうちから太陽光パネルも含めて理想の住まいを考えておくのもひとつの方法でしょう。今後のさらなる電気代高騰や自然災害の備えとして、太陽光パネルを活用した住宅にする選択肢があることも、頭に入れておくことをおすすめします。
ばばえりFP事務所代表。関西学院大学商学部を卒業後、銀行の窓口業務に従事。その後、保険代理店や不動産業界などでも経験を積み、独立。自身が過去に金銭的に苦労したことから、難しいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えするべく活動中。お金にまつわる解説記事の執筆や監修を数多く手掛けている。保有資格はAFP(日本FP協会認定)、証券外務員1種など。
(掲載開始日:2023年9月1日)
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